評論家間の評判がよく、観てみたが、なるほど切り口は新鮮だし、後味も良い作品だと思う。 ただ、やはりこの映画、元が舞台の脚本であることが如実であり、その意味で期待以上とは言えなかったと思う。 ４人の会話劇であり、ワンシーン（ほとんどがアルプススタンド）であり、上映時間と実際の時間との差が無い。また、各々がプチ挫折（市井の高校生らしい、あるある的な挫折）を抱えており、それらをこの野球観戦（応援か）という短い時間内で、ある程度解放してゆく様を描いたものだ。であるからして、舞台だとすれば、野球そのものを描く必要はなく、それぞれの挫折は会話の中で表出すればよいことになる。 でもそれだと映画的でないと思う。やはり、フラッシュバックでそれぞれの事情も具体的に描いて欲しかったし、白熱する球児たちの動きも見せて欲しかった。シーンの切り替えや、多面的なテイク、多彩なカメラワークという映画ならではの武器を多用してこそ、映画にする意味があるのではないかと思ってしまった。