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Till

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4 years ago

3.5


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니트람

영화 ・ 2021

평균 3.4

オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー賞で作品賞・監督賞・主演男優賞など8部門を受賞したドラマ映画。 1996年4月28日にオーストラリア・タスマニア島のポート・アーサーで起こった無差別銃乱射による大量殺人事件「ポート・アーサー事件」の犯人マーティン・ブライアントの「事件を起こすまで」を描く。一日の犯行で死者35人、負傷者15人の犠牲者を出したオーストラリア史に残る凶悪事件で、これを機に世界中で銃規制を求める声が高まったという。知的障害かつ何のライセンスも持っていないマーティンが簡単に自動小銃を手に入れられる銃社会の恐ろしさにはやはりゾッとするし、正直異常としか思えない。日本に生まれて良かったなと改めて実感した。 ただ、このマーティン・ブライアントという人物ももちろん同情はできないが、何とか救うことができなかったのだろうか。知的障害をもつ彼はその数々の奇行から近隣住民には忌み嫌われ、同級生からもいじめの対象となってしまう。映画のタイトルにもなっている「NITRAM」というのもマーティン(MARTIN)を逆さ読みにしたもので、小さい頃に同級生から蔑称で呼ばれていたもの。彼は周囲の人間から完全に「社会不適合者」の烙印を押されてしまっているのである。 しかし、マーティンは決して根っからの悪人とは言えず、優しい心を併せ持った人物でもある。そんなマーティンの人間性に惹かれる者も僅かながら存在して、彼の奇行に必死に耐えつつも無償の愛を注ぎ続ける父親、そしてとあるきっかけから友人関係となる資産家のヘレン、彼らはマーティンの数少ない理解者であり、マーティンも彼らのことを心の底から愛している。でもそんな彼らでさえも自らのちょっとした言動・行動で傷つけてしまう。「やってはいけないことをやってしまう」彼の困難な性格が愛する人をも傷つけてしまうのである。本人に決して悪気がないというのがまた哀しい。彼が心境を吐露する終盤のシーンには何とも言えないやるせなさを感じた。 そして特筆すべきは主演を務めたケイレブ・ランドリー・ジョーンズの繊細な演技。心優しいけど気性は荒い、温和だけど暴力的、大人だけど子供というこのアンビバレントな難しい役柄を見事に演じきっていた。第74回カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞したのにも納得の素晴らしいパフォーマンスだったと思う。 人を殺傷できる「銃」を手軽に買えてしまう銃社会の恐ろしさを描きつつ、社会に馴染めない人間の生き方についても考えさせられる本作。もし身近にマーティンのような人間がいたら、おそらく自分も距離を置いてしまうだろう。しかし、そういった人物にこそ救いの手を差し伸べる必要があるのだと痛感させられました。