この映画には三つ変な部分がある。 ●　監督はドイツ人でアゼルバイジャンという ほとんど謎の国のスラム街を舞台にした映画。 ●　セリフはまったくない。 ●　主人公のおっさんが持ち主不明の ブラジャーの持ち主を探すという奇妙な話。 ……世の中にある多くの映画とはあきらか違う 変な要素がもりだくさんだ。しかし、見てみる と違和感がなく話は理解できる。 セリフがなくても人物と表情と行動だけで 何を考えているのか、わかるように作ってある 映画なのだ。 主人公のおっさんはシンデレラの王子がガラス の靴の持ち主を探すように、多数の家をたずねて 謎のブラジャーの所有者を探す。 　しかし、当然ながら変人扱いされて ひどい目にあうこともある。協力者もいない。 この男は、なぜ、そこまでして、ブラジャーの 持ち主を探すのか？　 おっさんには嫁も子供もいない。 定年退職したため、仕事仲間もいない。 孤独である。 よりどころになるものを持たざる者だ。 他の人の意見にもあったが、 おっさんはブラジャーの持ち主を探すように みえて、おそらく、自分の居場所探し…… 自分の仲間探しをしていたのではないか？ 　中年期の孤独を解決する方法は あるのだろうか？　もしかしたら、孤独を 解決するヒントがこの映画の中にあるのか もしれない。 孤独やさびしさを抱えているすべての大人 におすすめしたい隠れた良作。