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니트람
평균 3.4
1996年4月28日、オーストラリア、タスマニア島で起きた無差別銃乱射事件を描いた作品。 原題の「NITRAM」は犯人の名前MARTINを逆さ読みにした侮蔑な呼び方。 知的障害と発達障害があると言う27歳のマーティン。 精神科医に通いながら父と母の3人暮らし。 子どもの時から社会に馴染めず、しかし突拍子もない行動で騒ぎを起こしてきた。 そんなマーティンが世界中を震撼させた「ポートアーサー無差別銃乱射事件」を起こすまでを描いていますが、観た後にはどんよりと気分が落ち込みレビューが書けなかった。 マーティンの両親の描写がとてもリアルに感じた。 マーティンに寄り添い甘やかし気味な父親と、マーティンをいつも追い詰める無表情な母親。 母親だって長年において育てづらいマーティンの存在に疲弊しきっていたのだろう。 そんな親子関係に変化を与えたのがかなり年上の女性ヘレンの存在。 (おそらく母親と同じくらいの年齢か) マーティンがヘレンの理解の元で暮らし始めてから明るくなっていく姿が何とも言えない。 ヘレンに「銃だけはダメ!」と言われたマーティンがその後あんな事件を引き起こすのも彼の必然だったのか…。 理解してくれていた父親とヘレンを亡くし、ヘレンにもらった50万ドルほどの大金を銃を揃える資金にするマーティン。 きっかけはTVで見た銃乱射事件だとしてもマーティンの心に積み重なってきた負の感情の爆発だったのか。 「普通の人間になりたい」と何度も思っていた彼の苦悩は理解され難いだろう。 オーストラリアではこの事件後に銃規制を厳しくしたが、結果的にはさらに多くの銃が所持されていると言う。 銃免許も所持届けもあれば銃は決して無くならない。 でもそんな銃社会の危惧に訴えると言うよりも、私にはマーティンのような「はみ出し者、孤独者、変わり者」と言われる人間がどのように社会に関わって行くべきか、それが大きなテーマに感じた。 映画は銃乱射のシーンは映さず、銃声のみ。 さらにニュース報道のTVが見える部屋の外で煙草を吸う無表情の母親の姿がインパクトがあった。 そもそも映画の中で息子を「MARTIN」と名前で呼ぶシーンがなかったのが異様なのかもしれない。 それから実際の事件の詳細をいろいろ読んでみると不思議だった。 35人の犠牲と多くの重傷者が出たが誰も犯行を阻止できなかった。 あのマーティンが殺人マシンになっているかのよう。 今でも犯行の動機はわからず、タスマニアでは触れられたくない事件だとか。 マーティン役のケイレブ・ランドリー・ジョーンズの怪演がすごい。 「スリー・ビルボード」でサム・ロックウェルに大怪我をさせられてもジュースのカップを優しく向きを変える男とはまったく違う。 今作では見る度に変わる眼差しがとても記憶に残った。 そして「JOKER」と同じ…いや、それ以上に心に重く残った。