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ひろ

ひろ

9 years ago

3.5


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Manderlay

Movies ・ 2005

Avg 3.5

ラース・フォン・トリアー監督・脚本による「アメリカ合衆国-機会の土地-」三部作の二作目となる2005年のデンマーク映画。 “ドッグヴィル”の町を焼き払ったグレース(ブライス・ダラス・ハワード)は、父親(ウィレム・デフォー)らと共に新たな居住地を求めてアメリカ南部にやってきた。たどり着いたのはマンダレイの大農園。そこは非人道的な奴隷制度が存続している場所だった。「白人として、黒人に対する責任をとらなくては」と考えたグレースは、奴隷たちに人権についての教育を施そうとする。しかし、被支配者の立場に慣れてしまった黒人たちにはなかなか受け容れられないものだった。そのうちに悪天候による飢饉がやってきて・・・。 あまりにも衝撃的だった「ドッグヴィル」の続編というだけで、興味をそそられたのは無理もない。非寛容という難しいテーマを扱った「ドッグヴィル」に続いて、奴隷制度を基に民主主義の愚かさを描いた「マンダレイ」。相変わらずラース・フォン・トリアー監督は、映画という武器を使って軍事大国アメリカを攻撃している。アメリカこそが正義だという映画が蔓延っている中で、ここまで自分の意見を通せる監督はなかなかいない。人間の抱える闇を映像化し続ける監督の作品は、平凡に生きる人間には刺激が強すぎるかもしれない。 「ドッグヴィル」でも注目されたのが、床に線や文字を描いただけのセットで役者が演じていることだ。実験的と言ったらそれまでだが、情報が少ないからこそ脚本と演技が持つ意味が際立ってくる。ただでさえ重苦しい内容なのに、この無機質なセットが重苦しさに拍車を掛けている。この発想は天才的だが、ここまで心をえぐるような作品ばかり作る監督の頭は病的と言ってもいいだろう。 ヒロインのグレースは例によって病んでる主人公だった。前作ではニコール・キッドマンが演じていたのに、今回はブライス・ダラス・ハワードが演じている。ロン・ハワード監督の娘というサラブレッド俳優だけど、妙に正義感があるわりに悶々としている不幸なヒロイン像にハマっていた。父親役は再びウィレム・デフォーが演じているし、トリアー作品では欠かせないウド・ギアも出演しているのは嬉しい。ジョン・ハートによるナレーションも雰囲気があった。 ラース・フォン・トリアー監督の作品を真っ正面から理解しようとしたって、頭がこんがらがってストレスになるだけだ。楽しく映画を観ようなんていう甘い考えで観ると、返り討ちにあう。人間は決して美しい生き物ではない。人間社会は不完全なものだ。何が正しいかなんて誰にも分からない。監督は問題を提起する。後はこっちがどう受け取るかだ。とにかく観てみて、考えてから賛否を決めても遅くはないだろう。