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劇場版本編にして、ヴァイオレット、そして彼女を取り巻く人々の最後にとてもふさわしい物語。 原作版とは異なり、TVシリーズでは再会を果たせなかった、ヴァイオレットとギルベルト。劇場版を制作するとのことで、この2人の再開をメインに描いた話になるかと思いきや、予想の3つ4つ上を行く展開で、2人だけの物語で終わらせず、ヴァイオレットのいる作品世界を含めての物語を最後まで描き切ったという感じがして、とてもよかった。 ヴァイオレットとギルベルトの再会と過去の関係性をどう振り返って再び向き合うのか、ホッジンズの子離れ、ディートフリートの自己の言動への反省と弟への向き合い方、その他C.H郵便社の人々の現在と未来、ユリスと家族・友だちのお話、エカルテ島の住民にとっての戦争の捉え方、手紙にとって代わる存在になるかもしれない電話の登場という時代の変化と、さらに60年後からみた時代の変化。このどれ1つが欠けても、最後のお話が完成できない上に、しかも単品ごとではなく互いに複雑に絡ませながら物語を展開していったのが、非常に素晴らしかった。 あまり人前で涙を流したくないのもあって、映画館で涙がでそうになっても、目がじわじわしながらも、どうにか堪えてるんですけれど、「お母さんの焼くパンケーキが大好きでした」というもう言葉選びでもうダメになってしまって、あのシーンですーっと涙がですね、ほおを伝っていきました。そういえば涙って温かいものだったわねって。しかも続けて弟への手紙で、悲しいという感情が理解できない代わりに、もう返事が返ってくることのない兄へお礼をするシーンで追い打ちをかけられて......しかも、これで終わりじゃないんですよ...... ホッジンズが怒鳴って大声を出すシーンも、とても臨場感があってよくて、2回目のヴァイオレットが扉の前に居てでもなお、顔を見せず突っぱねたギルベルトに対しての、「この大馬鹿者」ってセリフが、始めは勢いがあったのに最後尻すぼみになっているのが、あぁ、とても心情の揺れがでてる...って感じがした。アイリスが迷った後に、手紙ではなく電話を選択し、最終的に「いけすかない機械もなかなかやるわね」ってセリフもそうだし、ディートフリートの「みんな簡単には素直になれないものだな」ってセリフも戦争が残した様々な人々の葛藤が表されているし、まさか海にね最後綺麗に飛び込んでいくとも思わなかったし、一方でホッジンズのヴァイオレットと接していて感じた女の子の親ではもたないというやりとりのあとに、男の子の親でもダメだなとなっているシーンや、ヴァイオレットが期待しながらギルベルトの帽子かと尋ねたらそうでなかったときの素の表情とか、物語の緩急とか前後のつながりのつけ方とかもとてもよくて、特典小説のために3周したんですけれど、観ていて全然飽きなかったです。 素晴らしい物語をありがとうございました!!!
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