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【和製ワンハリ映画】 蜷川ワールド全開の映像表現の豊かさとその美しさ。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」ばりな史実への突っ込みもあり、もはやこれは和製のワンハリ。 ◆概要 太宰治の小説「人間失格」の誕生秘話を実話を元に描いたフィクション作品。監督は「ヘルタースケルター」の蜷川実花。脚本は「紙の月」の早船歌江子。出演は小栗旬、宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみ、藤原竜也、高良健吾、成田凌、千葉雄大、瀬戸康史ら。 ◆ストーリー 1964年、太宰治は自分の支持者である静子の日記をもとにベストセラー「斜陽」を生み出すが、太宰は“本当の傑作”を追い求める。身体は結核に蝕まれ、酒と女に溺れる自堕落な生活を続ける太宰を、妻の美知子は忍耐強く支え、やがて彼女の言葉が太宰を「人間失格」執筆へと駆り立てていく。 ◆感想 蜷川監督ワールド全開の映像表現とその美しさ。役者達の芸術的な体当たり演技。それらを存分に感じながら、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」にも見た、ラスト数秒で残す史実へのアンチテーゼ。自堕落で無茶苦茶な人生ながら至高の作品を作り上げた男の波乱万丈さが、見応えありの映画というアウトプットに仕上がった一本だと思う。 ◆蜷川ワールド 花と色。誰もが納得する(と思う)蜷川ワールドの2大要素がいかんなく発揮されてる。梅に菊に彼岸花にフジ…満開の梅の木々に囲まれた太宰と静子はとても美しく幸せに見えたし、吐血し倒れる太宰に降り注ぐ菊は安らかに天に誘われるかのような別の美しさ。花が各シーンで、その意味合いと重ねられ効果的に使われていたと思う。色で言うと、菊と一面の雪に見た“白”は死の象徴として描かれていたし、情熱的かつ野心的に太宰を愛した静子の“赤”、あと美知子が家族で塗りあった“青”のペンキは、太宰の死後、晴れを迎えた美知子の着物の色もそうだったように、美知子が守り抜いた純粋な家族愛の象徴でもあったように思う。さらに圧巻なのは、“全てをぶっ壊す”と語り、作品作りに没頭する太宰のシーン。紙が浮きドアが剥がれ、太宰の周りが全てゆっくりと分離していく様は、美知子の言葉の通り、全てを捨て最後の作品に賭ける男の凄みが十分に伝わってくる、豊かな映像表現だったと思う。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆アンチテーゼ 海から上がった二人の死体の腕に紐が繋がれていた史実。心中といえばまだその壮絶ぶりが垣間見え、太宰の富江への没頭ぶりが伝わり、ある意味太宰が神格化されているような感覚になる。が、映画ではラスト数秒で死に向かう太宰が水中で目覚め、エンドロールに入る。これは、心中ギリギリで自分だけ回避した映画冒頭同様、心中なんてさらさらするつもりのなかった太宰の、それこそ“人間失格”さを印象付ける、女性監督・脚本家ならではの太宰自身への攻撃・揶揄だったように感じた。 ◆神演技 二階堂ふみの全裸上等な体当たり演技は言わずもがな、短期間で相当減量したという小栗旬の頰のこけ方は病理に侵された男の顔まさにそのものだった。宮沢りえの凜としてそれでいてにじむ母の強さもしかり。沢尻エリカだけ…どうしてしまったものか笑 ◆ 事前情報が割と酷評だったので鑑賞前はどうなるものかと心配だったけど、十分見応えのある作品でした。太宰文学を十分に勉強して次回は臨みたいと思います! ◆トリビア 小栗旬は『ゴジラVSコング(邦題未定、原題GODZILLA VS. KONG)』でハリウッド進出予定(http://ningenshikkaku-movie.com/)。 #人間失格 #人間失格太宰治と3人の女たち #映画 #映画鑑賞 #映画ノート #映画好き #映画大好き #映画記録 #映画レビュー #映画メモ #邦画 #シネマ #映画紹介 #映画部 #おすすめ映画 #映画鑑賞記録
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