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私が最も好きな作品です 映像が煌びやかでCGもなく、美しさに感動しますが、この映画のいい所はストーリーの構造だけでなく映画全体で主題とロレンスを非常に巧みに、完璧に語っているということです。 ネタバレです アラビアのロレンスのテーマはロレンスは誰か、です。それは映画冒頭ロレンス死後のシーンで提示され、それからずっとロレンスがアイデンティティをいかに持っていない人間かが語られていますね。 最初はイギリスに全くなじめないエリート軍人で非常に変わっている…アラビアでは英国人と言われ、軍服のままアリに居眠りを見られるなど信用されない扱いを受けていたが、ガシムを救った後とても似合う白のアラブのローブに身を包みロレンスは自分が預言者とも思う…しかし、デラア後彼は自分がただの平凡な人間と気付くが、イギリスの陰謀により彼はイギリスとアラブの間で苛まれ大虐殺を行ってしまい、完全に帰る場所が無くなってもはや彼は誰なのかわからない、アイデンティティは存在しない。 演出や編集、それぞれ傑出したセリフで見事にロレンスや周りの人物、状況が表現されていますね…さすが編集出身のデヴィッド・リーン! この映画はフィクションで史実と違いはあるものの、この当時イギリスを批判しロレンスという人物を(映画を完成させるために創作はしているものの)これほど完璧に写しています。たまにイギリス礼賛映画だという感想がありますが全くの逆ですね。 この映画は視覚の美しさがあると共に映画自体の構造もシンメトリーと循環構造になっています。それに気付いた時深い衝撃を受けました。 まずバイクが映画冒頭、中盤、最後の3つに出ています。中盤ではバイクに乗っている人から「お前は誰だ?」と問いかけがあり、最後ロレンスを追い越していくバイクは時代に取り残されたロレンスを隠喩しています。 前半アリと出会うシーンでは、アリはガイドのタファスを殺します。ロレンスは「アラブは欲深く野蛮で残酷だ」と言って、アラブ叛乱は幕を開けます。 そしてロレンスが大虐殺を行うシーンがありますが、その地名はタファスです。その後、アリが「君はアラブが欲深く……と言ったがそれは誰なんだ!彼ら(イギリス)だろう!」と言っています。ロレンスの熱は地に落ちます。 他にも素晴らしい演出たくさんありますがこれはリーン悪魔に身を売ったなと思います笑 冒頭のロレンスがカイロで同僚たちと話すシーン、あそこだけでロレンスの紹介になって本当に素晴らしいです。最初ロレンスが描いている地図の場所は運命の場所、カイロです。 ロレンスはタファスが良き人物だと思って銃を渡しましたが、それを構えたばかりにアリに殺されてしまいます。その後確かアリに渡された同じ銃でロレンスは自分が救ったガシムを殺します。そこで彼は自分が運命を操る神のように思ったんですね。実際にアラブの運命は彼次第でした。そして最後、ロレンスはタファス大虐殺で因縁の銃を使います。何て皮肉なんだー笑 ロレンスは運命なんて無いと豪語していましたが、運命は実は全然握っていなかったんです… この映画の時代は同性愛がはっきり描くことができない時でした。しかしリーンははっきりでなくともちゃんとロレンスの性を伝えましたね…男の群衆の中に可憐な人物が1人、紅一点と言えるような演出でした。女性的でしたね。 彼の仕草(座り方、歩き方、喋り方etc)から伝わるところが多かったので俳優もあの時代よくそんなことができると関心です泣 彼のアイデンティティ問題は性も大きなところを担っています。 この映画は一つ一つのセリフが素晴らしいので壁に貼りたくなります! アイデンティティ、罪と贖罪、異民族、帝国主義という多様な要素が詰まった映画史にめっちゃ名を刻む映画ですね。 政治的にも2000年代から国際協調が失われて一種のナショナリズムが欧米で台頭して来ましたが、それも含めとても現代的な作品だと思っています。 ちなみにエイリアンプロメテウスでもアラビアのロレンスの引用が使われています、アラロレを知ってる人はその映画の冒頭で結末が分かっちゃいます!ぜひ! 細かい演出の一つ一つにはっとさせられる意味が含まれているので何度もみることをおすすめします、これだけは激推しです 私はアラビアのロレンスをスクリーンで見たことがないのですが今回の午前十時の映画祭ファイナルで放映されるので、受験シーズンと被りすぎるのですがワンチャンを狙います。最後にそれに祈ります。 長文失礼しました、これでも削った…
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