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舞台はアメリカ、サウスダコタ州。 小さい時から馬と暮らしてきたカウボーイ、ブレイディ。 ロデオ乗りで落馬し頭に大怪我をしたブレイディが再起できるか苦悩する…そんなお話。 ブレイディ本人だけでなく、父や自閉症の妹リリー、周りのロデオ仲間など全てが実名で本人達が演じます。 中国出身の女性監督クロエ・ジャオの手腕が光る素晴らしい映画でした。 落馬によってできた生々しい怪我跡のシーンから始まり、ブレイディの日々の苦悩が静かに描かれています。 貧しいながら馬の調教師としてお金を得るブレイディ。 愛馬「ガス」を売られ、生活のためにスーパーで働くブレイディ。 ロデオ乗りが憧れの存在でもある地域で子どもに声をかけられたり…しかし感情を圧し殺すブレイディ。 彼の兄貴分で、もっとひどい落馬事故にあったレインの存在は重かった。 車椅子でリハビリをするレイン、特殊な合図で手の会話をする2人。 ロデオのような椅子にまたがり、リハビリを手伝うブレイディ。 「夢を諦めるな」とレインは言うけれど、考えに考えてロデオに乗る直前に止めた選択は悲しいけど現実なのです。 自分が守る、と言った妹の存在や父親との関係も、これからも生きていかなければならないブレイディの覚悟を感じました。 ロデオ復活の夢物語にならないのも良い。 馬を愛し、仲間やレオンを愛し、家族と生きる決意をしたブレイディの生きざまはとっても心に響きました。 怪我をした愛馬「アポロ」の安楽死、口笛で合図をした彼の覚悟が辛い。 怪我をした自分が動物だったら同じように殺される…そう言うシーンも辛かった。 何だ、この作品は。 地味だけど登場人物全てに心を持っていかれそうなスゴい作品でした。
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