映画の至るところに暗喩や細々とした伏線が仕込まれており、それを紐解きながら鑑賞する面白さを存分に味わえる秀逸なサスペンスです。物語の全体的な構造も見事ですし、セリフに頼らずイメージとビジュアルで語るべき事を完璧に表現しつつ、尺を90分に収める手腕は見事と言う他ありません。
これからご覧になる方は「複製された男」という日本語タイトルを忘れてください。これが陳腐な予告編と共にひどいミスリードになっています。また、ピンと来なかった方は劇中のジェイク・ジレンホールが母親と会うシーンを下記の正しい字幕訳で見直してみてください。日本語字幕が映画をわざと難解なものにするため、「意図的に」誤訳しているためです。以下ネタバレですが。
"the last thing you need is to be meeting strange men in hotel rooms. you have enough trouble sticking with one woman,don't you?"
字幕では「見知らぬ男とホテルで会うなんて。彼女が誤解しかねないわ。」ですが、正しくは「見知らぬ男とホテルで会うのはやめなさい。女に惚れ込むなんて面倒事はもううんざりでしょ?」です。また、
"you have a respectable jobs,you have a nice apartment,and since we are being frank here, I think you shoud quit fantasy being third-rate movie actor."
を「いい仕事にいいアパート。率直に言うわ。三流役者とそっくりなんて話はよして。」と訳してますが、本当は「いい仕事にいいアパート。だから正直に言うけど。三流役者になろうなんて幻想はもうやめにすべきね。」です。
このシーンはセリフ、演者の表情とっても確信をつくめちゃくちゃ重要なポイントです。それをこうもねじ曲げられたのでは理解するのは無理でしょう。収益目的で本来の意図を損なう悪い習慣、なんとかならないものでしょうか。