
dreamer

The Mission
Avg 3.3
このローランド・ジョフィ監督の「ミッション」を観ている間中、心がピリピリさせられた。 心の中の一番重要なところに触れられる感触と言ったらいいだろうか。 それくらい、何か強烈でインパクトのある、魂を揺さぶる映画的なムードを、この映画は持っているのだ。 そして、その感動は、後半にいけばいくほど深く、大きくなっていくのだ。 物語は、弟に恋人を寝取られ、憎しみの末に逆上して弟を殺してしまう、ロドリゴ・メンドーサ(ロバート・デ・ニーロ)という男の、俗物的な話から始まる。 その罪の意識から絶望の淵に落ちたロドリゴを、神は見捨てなかった。自ら獄に入り、虚ろな精神状態のロドリゴに「償いの苦行に耐える勇気があるのか?」と声をかけたのが、この映画のもうひとりの主人公、ガブリエル神父(ジェレミー・アイアンズ)だ。 こういう考え方が、いわゆる西洋の"神の観念"、生き方に対する真摯な態度という基準になっているようで、私は非常に魅かれてしまう。 もちろん、この映画は"イエズス会"や、"南米の領土問題"という歴史的な背景があるのだが、それは単なる題材であって、映画のテーマではないから、その歴史的事実を理解することにこだわる必要はないと思う。 そこが、例えば、ヴェトナムを題材として、ヴェトナムを見つめ直す事実をテーマにした、オリバー・ストーン監督の「プラトーン」と違うところではないかと思う。 しかし、この二作品が、いずれも、戦う人間たちを通して、生きることの不条理、愛と希望を、"神の視点"で捉えているのは、共通しているところだ。 そして、どちらかと言えば、「プラトーン」の既によく知られているヴェトナム戦争をストレートに観せるわかりやすさに比べ、この「ミッション」は、なじみの薄いイエズス会の話だから、ストーリーを頭で追うような見方をすると、わかりづらいかも知れない。 しかし、これほど映画らしい、映像の魅惑的な一大スペクタクルを前にして、筋書きにばかり捉われていては、非常にもったいないと思う。 映画は、観る者の感性と心に訴える素晴らしい総合芸術だと、常々思っている。心を真っ白にして、画面を観続けているうちに、南米のイグアス上流の密林やインディオの村に、ある種の安らぎを覚えてしまうのだ。 インディオの素朴な歌声に心が洗われるのだ。そして、十字架を背負う男が、滝にのまれる壮大なシーンに目頭が熱くなるのだ。 かつて、俗物人間だった罪多きロドリゴが、神父やインディオの世界に引き込まれていったように、観ている私も思わず引き込まれてしまうのだ。 この作品は、タイトルの「ミッション」が意味する"伝道"そのものの映画で、18世紀のパラグアイの伝道区に残り、平和な大地と人々を守るため、スペイン軍と戦う決意をした男たち。 ひとりは信仰で、ひとりは剣で、神の愛を信じ続けた男たち。現実の結末とは裏腹に、力強さが残るのは"神"の力なのか。エンニオ・モリコーネの音楽を聞いているだけでも、その思いが切々と私の心に迫ってくるのだ。 尚、この作品は、1986年度の第39回カンヌ国際映画祭で、最高賞のパルム・ドールを受賞しています。