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本作のエンディングが、現実なのか幻想なのかの論争は、コアなファンの間で永遠に続いていくだろう。また、私たちの耳に聞こえてくる声に対しても、今一度疑ってみる必要がある。 例えば、デ・ニーロ演じるパプキンの母親の声。パプキンを罵倒するヒステリックな母親の声は、画面のフレームの外から聞こえてくるものの、この母親は一度たりとも画面にその姿を現していない。 もしかしたらヒッチコック監督の「サイコ」の主人公ノーマン・ベイツの母親のように、寝室で既に白骨化している可能性がある。あの声はパプキン自身が作り出した幻聴だと考えられる。 パプキンが全国ネットのテレビ番組で自分の話芸を披露した時に湧き起こっていた観客の笑い声や歓声も、そのまま鵜呑みには出来ない。なぜならスタジオの観客席は一度も映っていないからだ。それに番組の司会者も、FBI捜査官も、パプキンの書いたジョークを酷評していたではないか。そんな彼が観客を爆笑の渦に巻き込むなんて、絶対に有り得ないことである。 どうしてもこのシーンは、デ・ニーロのスタンダップコメディアン顔負けの話芸にばかり注目が集まってしまうが、スコセッシ監督の仕掛けた奥深いtrapにも注目して欲しいものですね。
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