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フランス、パリ。 ミシェルは定職にもつかず、車を盗んでは売り、女から金を借りて回るような刹那的な生活を送っていた。(野良犬のような雰囲気が庇護欲を掻き立てるのか、女にはモテる) いつものように盗んだ車でドライブしていたところ、白バイに止められ、逃れるためにミシェルは警官を射殺してしまう。 指名手配となったミシェルだが、先日バカンスで出会ったパトリシアという女性と共に、盗車を売った金でイタリアへと向かうことを計画していた。 ワル仲間のアントニオに頼み、換金の手続きを行おうとするが、なかなか連絡が通じない。 その間に、ミシェルとパトリシアは関係性を深めていく。と同時に、警察の捜査の手も迫ってくる。 なんとかアントニオと合流し、金を受け取る手筈を整え後は二人で国外へと逃げるのみの筈だったが、土壇場でパトリシアが二人の愛に疑念を抱き、警察へと通報してしまう。 それを聞き、激昂するも最終的にミシェルは全てを諦めた。 投降しようとしたミシェルだが、アントニオから銃を渡され、その瞬間に到着した警官に撃たれてしまう。 銃声を聞き、瀕死のミシェルの元に辿り着くパトリシア。死に際に彼女に向かってミシェルが言う。 「まったく最低だ」 呼吸を止めたミシェル。パトリシアはカメラ目線で答える。 「最低ってなんのこと?」 彼女は振り返り、物語はそこで終わる。 ・ ヌーヴェルバーグの代表作。 スタジオ資本では無いからこそ可能となったゲリラ撮影や実験的な編集(ジャンプカットの多用や、長短入り混じるカット割りによる独特なリズム)は今見てもフレッシュであり、才気迸る若きゴダールの作家性がモノクロの画面の中で輝く。 ・ ゴダールはこの刹那的な悲喜劇を演じるキャラクター達に、人生とは、自由とは如何なるものかを具現化する軽快でいて沈痛なダンスを踊らせる。 ・ ミシェルは社会的にみれば完璧なクズ男だし、それを自覚して我が道を突き進んでいる。 「つまり、俺はアホだ。結局は、そうさ、アホでなけりゃ。」 「俺はフランスが好きだ。海が嫌いならば・・・、山が嫌いならば・・・、都会が嫌いならば・・・。勝手にしやがれ!」 盗んだ車で走り出しながらこんな台詞をカメラ目線で吐く主人公。屈託のない尾崎豊。彼は賞味期限の近い自由をただ振り回して暮らしている。 ・ そんなフリーダムクズ男はモテる。(理不尽だ!!) 数々の女性とインスタントな関係性を築き上げており、勝手に部屋に入って寛いだり金をネコババする。 そのシークエンスの中のワンシーンが印象的で、芸能関係風の女の子の部屋に入って会話しつつ、突然金の無心をしたかと思えば、彼女が着替えてる隙をみて金をネコババする。 リズミカルなカット割りとミシェルの手際の良さがコミカルな雰囲気をもたらしており、ミシェルの卑小でいて自信家なキャラクターを如実に提示している。 ・ 自由を振り回す男が惹かれたのは、アメリカからやってきた自由を求める女だった。 パトリシアは独立心を持ちながら、自身の生き方に満足しない女性であり、記者としての成功を夢見ている。 ・ その二人の男女は互いに自分に無いものを求め惹かれ合うが、最期にはより大きな自由を求めたのか、女は男を捨てる。 ・ 恋愛と自由の共存はかくも難しいものである。 ・ 「悲しみか、無かどちらを選ぶ?」 「悲しみは妥協だ、全か無かを選ぶ」 ・ 「人生最大の野望は?」 「不滅になって死ぬこと」
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