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『永遠のこどもたち』『インポッシブル』で監督を務めたJ・A・バヨナが製作総指揮を担当し、同2作の脚本を手掛けたセルヒオ・G・サンチェスがメガホンを取ったスペイン・アメリカ合作のサスペンス・スリラー。 マローボーン4人兄弟とその母親は凶悪殺人犯である父親から逃げるため森の中にたたずむ大きな屋敷へと引っ越して来た。その後、母親が病気で亡くなり、兄弟たちは互いに支え合いながら平穏な生活を過ごすが、次第にその屋敷で不可解な現象が起こり始める…。 予告編がゴリゴリのホラー映画を期待させるような作りになっており、それ目的で観ると肩透かしを食らう。そもそも原題は『マローボーン』であり、「掟」というのは完全に後付けなので、「掟に縛られる」系のオカルトホラーの要素は薄い。それと、一応どんでん返し映画の部類に入ってくると思うが、肝心のオチは今となっては使い古された手法で、正直言って目新しさはない。 ただ、この映画の本当の魅力は、ホラーでもどんでん返しでもなく、【家族愛】がテーマの人間ドラマだと思う。一見すると悲惨で救いようのない物語であり、真実が明るみになるにつれて心が苦しくなるが、その中にも【希望】があり、決して「悲しい」という言葉だげでは終わらないのがこの映画の素晴らしいところ。観終わってからもしばらくの間はこの余韻に浸ってしまう。 そして役者の演技も素晴らしい。主に若手俳優を起用しているが、中でも主演のジョージ・マッケイの【叫び】の演技、そしてラストの【微笑み】には胸を打たれた。最近では『1917』でも主役に抜擢されており、今まさに大注目の若手俳優である。それから、『スプリット』『ミスターガラス』に出演して“絶叫クイーン”の異名をもつアニャ・テイラー=ジョイも魅力的。決して美人とは言えないが、優しく包み込むような穏やかな雰囲気があり、本作の役柄にドンピシャにハマっている。 批評家からの評価は低いが、個人的にはかなり好みの作品。ホラー映画が苦手な人にもぜひ観てほしいです。
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