
てる

Liz and the Blue Bird
Avg 3.7
なんて瑞々しい青春ドラマなんだろう。 部活をやっていた人なら誰しもが感じたことがあるであろう嫉妬や憧れ。誰しもが共感でき得るのではないだろうか。子どもと大人の狭間の不安定で未成熟な心が物凄くリアルに描かれていた。 この作品は『響け!ユーフォニアム』のスピンオフだ。このシリーズはとても人間模様がリアルで、当時、部活動に打ち込んでいた私は涙なしにはこの作品は観られなかった。それくらいこのシリーズには思い入れがあり、気に入っている。 だけど、良くも悪くも京アニ感が強い。現実にいたらドン引きするだろうなと思うような妙な子が出てきたり、動きがスムーズ過ぎて妙なモーションが気になってしまったりする。つまり、現実味がないと感じるときがあるのだ。 一方でこの作品は京アニならではの丸みを帯びたシルエットや、やけに艶々した肌などの過剰な描き方はされておらず、リアルな等身大の少女を描いている。アニメならではのデフォルメ感を抑え、より現実の人間に近づけた姿だからこそ、共感しやすくなっている。 希美とみぞれ、こういう2人っているよね。ぐいぐい引っ張っていく姉御肌気質の子と、気が弱くて主体性が薄いいそぎんちゃく気質の子。どのクラスにも必ずこういう子たちはいた。 2人の関係性は平等ではない。従えて支配することによって気持ちよくなる側と、支配されることによって安心する側。この2人は謂わば主従関係だ。だけど、子どもの頃の精神というのは急激に変化するもので、支配される側が自我に目覚め始めるとその関係性は崩れる。 希美はみぞれを支配していることに優越感を覚えていた。みぞれは希美に依存していた。 みぞれは元々依存体質だし、1つのことに打ち込むのが得意だったのだろう。彼女の演奏が上手くなるのは必定だった。一方、希美は気が多く、飽きっぽい性格なので、上手くはならない。2人の成長速度に差が生まれるのは当然なのだ。 今まで従えていた者があっという間に自分を抜いていく。嫉妬の感情が芽生えてくるが、それを肯定するのが怖い。自分が主だと思っていたというのを明るみにするのが怖い。自分がみぞれに対して嫉妬という感情を抱いているというのを認めるのが怖い。自分が実は矮小で醜い感情を抱えている人間だというのを認めたくない。だからみぞれと距離を置いた。 みぞれは希美がそんな悩みを抱えているのを露ほども知らない。今までのように仲良くしてほしいだけなのに、なぜか避けられる。 2人の関係性はあっという間に瓦解する。お互いがお互いを見謝っていたことに気づいたのだ。 希美はみぞれの主ではないし、みぞれは希美の従者ではない。同級生の女の子なんだということを理解したのだ。 そこでようやく2人の関係性が対等になり、ようやく2人は友達になれた。 この作品は、不安定な女子高生の際どいレズビアン物ではない。みぞれと希美の成長をテーマにした青春ストーリーなのだ。 みぞれは自分がリズだと思っていた。みぞれは希美こそが青い鳥だと思っていた。 奔放な青い鳥を閉じ込めいたリズ。確かに奔放な希美が青い鳥のようだけど、そうではなかった。 青い鳥は自由に羽ばたけるのに、閉じ籠って飛び立とうとしなかった。リズという大好きな人のそばにいたかったのだ。でもそれは鳥籠に入っているのと同じだ。本来はもっともっと広い世界を渡れる力を持っているのに、鳥籠から出ないのは、リズからすると、とてもとてももどかしい。 自分が空高く飛べることを自覚したみぞれはとても美しかった。様々なことに吹っ切れて、自信を持って演奏していた姿はとてもかっこよかった。思わず涙が出た。 とても良い演出だった。 レズっぽくはあるけど、そうならなかったことに好感を抱いた。 この作品は青春物なんだと思わせてくれるのがとても良かった。 本当に良い作品でした。