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公開当時の世間的な評価はイマイチだったのものの、後にコアなファンからのカルト的な人気を得て、今ではSF映画の金字塔とまで呼ばれるようになった名作『ブレードランナー』の正式な続編。舞台は前作の30年後の世界。LAPD所属のブレードランナーであるK(ライアン・ゴズリング)は、違法となった旧型レプリカントの解任(抹殺)処分を担当していた。ある日、逃亡レプリカントのサッパー・モートンを射殺したKは、彼の庭にある枯れ木の根本深くより不審なトランクを発見するが、その中には帝王切開の合併症で約30年前に死亡した女性レプリカントの骨が入っていた。レプリカントの出産という驚愕の事実が社会混乱を招くことを危惧したジョシ警部補はKに証拠隠滅を指示し、彼は事件の真相を確かめるべく捜査を開始する…。 アカデミー撮影賞、視覚効果賞を受賞しただけあり、陰鬱で退廃的な近未来の情景、製作に1年以上を費やしたホログラムのラブシーン、骨の髄まで響くような重厚なBGMなど、演出面においては満点のレベルで、3時間弱の尺の長さを一切感じさせない。前作の設定を象っただけのありふれたSFアクション映画になってしまうことを心配していたが、そこはさすが腕のあるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、そして前作の監督であるリドリー・スコットが製作総指揮を務めたということもあり、切なくも美しい『ブレードランナー』特有の雰囲気に加え、「人間とはなにか」という哲学的かつ倫理的なテーマもしっかりと引き継いでいる。 Kを演じたのはライアン・ゴズリングで、『ドライヴ』の時もそうだったが、彼は寡黙でクールな男の役がホントによく似合う。人造人間感の漂うその無機質な表情が、ラストの微笑みをよりいっそう引き立てている。そんな感情を表に出さないKが唯一心を許せる相手がホログラムのジョイ。彼女の存在もかなり重要。感情を持つ彼女はKのことを本気で愛しており、一途に支え続けるのだが、肉体を持たないため互いに触れることができない。その様子がもどかしく、そして切ない。 デッカード、ガフ、そしてレイチェルが登場するなど前作との繋がりも見られ、なおかつ『ブレードランナー2049』としての新たな物語を確立しており、続編として理想形と言っていいほどの完成度だった。批評家からの評価は高いが興業収入は振るわないという前作と同じ流れを辿っているので、本作もまた、何十年後かにはカルト的人気を誇る名作と謳われているかもしれない。
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