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米ソの核戦争を題材としたシドニー・ルメット監督作品。本作が製作された1964年は冷戦中であるため、今みれば過去の歴史映画だが、当時の人にとってはかなりタイムリーな社会派映画だったのだと思う。同年に公開された『博士の異常な愛情』と設定が酷似しており、実際に訴訟問題にまで発展したそうだが、こちらはコメディ要素は皆無でシリアスなサスペンスを主軸に展開されるので全くテイストは異なる。核戦争がテーマではあるが派手な銃撃戦や戦闘シーンは一切なく会話劇を中心としているのだが、軍事コンピューターが誤作動を起こしてから最後まで緊張感を途切れさせない演出力は見事。また、サスペンスだけでなく緊急事態時の人間の心理状態も描かれている。いっそこのまま攻め込もうと提案する政治学者や逆にソ連の仕業だと疑う大佐、何が何でも命令に従おうとする乗組員、そして事態を収束させようと奮闘する大統領などそれぞれの心理描写がしっかりなされいる。特に大統領が最後に下した苦渋の決断はなかなか衝撃的というか、何とも言えないような終わり方で、観終わった後に強く余韻を残す。 日本ではあまり知られてない作品なのだが、傑作であることには間違いないので、白黒映画だと毛嫌いせずに一度見てほしい。
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