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この映画「タイタンの戦い」は、ギリシャ神話を借りての英雄冒険物語で、危機に陥る王女アンドロメダを助けようと、若い英雄ペルセウスが様々な怪獣、怪異と戦うというお話だ。 ペルセウスに扮するのは、新人のハリー・ハムリン。王女アンドロメダが、「ブラザーサン・シスタームーン」のジュデイ・バウカー。 そして、この大冒険をオリンポス山上の神殿から見つめているのが、なんと名優ローレンス・オリヴィエのゼウスを初め、「ライムライト」のクレア・ブルーム、「ミス・ブロディの青春」のマギー・スミス、初代ボンド・ガールのウルスラ・アンドレスという豪華なキャストだ。 しかし、何と言っても、この映画の最大の見せ場は、ダイナメーション、すなわちダイメンショナル・アニメーション(立体動画)と呼ばれる手法を駆使して見せる、ペルセウスと怪獣との戦いだ。 製作は特撮映画の帝王で、「アルゴ探検隊の大冒険」などを作ったレイ・ハリーハウゼン。 怪獣や魔人の模型を一ミリずつ動かし、コンピュータ仕掛けで、一コマずつ撮影していく方法だが、なかなかのスペクタクルに仕上がっていると思う。 神殿の神々の部分がセット一つで、豪華な演技派のスターたちも、やり場がなく重苦しいのに比べれば、この特撮冒険シーンの方が、遥かに楽しめる。 海神ポセイドンに管理されている海獣クラケン。髪の毛一本一本が蛇だというメドウサ。 死の国に住み、三人で一つの目を持つグライアイなど、神話からヒントを得て、それでいて現代風にいささかグロテスクな怪獣、魔人が跳梁するわけだ。 しかし、この特撮技術はさすがに見応えはあるのだが、もう一つ胸に湧き上がる興奮が得られないのだ。 それはなぜかと考えてみると、確かにお金がかかって、当時としては立派な特撮技術なのだが、"夢"というものが欠けているのだ。 人間らしい豊かな希望と愛に満ちた"夢"がないのだ。神の世界だから、と言ってしまえばそれきりだが------。 そんな中、唯一の救いは、王女アンドロメダのジュデイ・バウカーが何とも可憐で、血の通った暖かさでホッとさせてくれる。
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