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自分よりも年下の経験の浅い人たちに幇助を頼んでいた時の主人公は相手と話しながらも、相手の話など聞いていない。 嫌々ではあるが幇助を承諾してくれた老人に対しては違う。明らかに相手の方がウワテだからだ。主人公はかつて自分と同じような境遇にあったこの老人の「桑の実の体験」を聞き(聞かされ)自分が絶望している日常の中にある、ひこうき雲やグラウンドで遊ぶ子供たち、夕陽の美しさが存在していることこそ本当はあり得ないものなのだと思える。 黒澤明『生きる』にも主人公が夕陽の美しさに感動するシーンがあったけれども(こちらは病に冒され、余命幾ばくだからこそ日常がかけがえのないものになるという形だが)、やはり日常こそあり得ないものなのかななどと鑑賞しながら思った。
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