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【なくなる映画】 ブローカーが、一つの命を通してブローカーでなくなっていく“家族”の話。母が母でなくなっていき、次第に見ているこちらの偏見もなくなっていく没入感で、メッセージも超骨太な一本。 ◆トリビア ○ 日本では2007年〜2021年度で「こうのとりのゆりかご」に161人の赤ちゃんが、韓国では2009年〜2019年でベイビーボックスに1802人と10倍以上のペースで赤ちゃんが預けられた。(https://www.webcg.net/articles/amp/46540) 〇約6年前から、是枝監督が映画祭でソン・ガンホやカン・ドンウォンらと顔を合わせており、会話を重ねる中で、本作の製作に繋がっていった。(https://gaga.ne.jp/babybroker/about/) ○ 是枝監督はコロナ禍でハマった韓国ドラマの影響でイ・ジウンとイ・ジュヨンをキャスティングした。(https://www.cinematoday.jp/news/N0130049) ○本作の撮影監督を務めたホン・ギョンピョ、助監督で通訳も務めた藤本信介は「流浪の月」でもタッグを組んでいる。(https://globe.asahi.com/article/14641153) ○ソン・ガンホは、撮影期間中、予定より早く現場に来て編集映像をチェック、使用するテイクを監督に逆アドバイス、それを毎日のようにやっていた。(https://eiga.com/news/20220613/14/) 〇ソヨン役のイ・ジウンは、本作のオファーを受ける以前に飲食店で偶然是枝監督を見かけており、映画の顔合わせもたまたま同店となるミラクルが起きていた。(https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2195217) ○ カン・ドンウォンとイ・ジウンがホテルで赤ちゃんにミルクをあげるシーンでは、ヘジン役の子役が撮影前にはしゃぎすぎて本当に寝ている。(https://www.sakigake.jp/news/article/20220613OR0079/?nv=ent2022) 〇是枝監督は、強盗3人が赤ん坊を抱えて砂漠をさまよう映画『三人の名付親』の悪人が善をなしてしまうところを本作の参考にした。(https://www.cinemacafe.net/article/2022/06/20/79410_3.html) ◆関連作品 ○「万引き家族」('18) 是枝監督の代表作。第71回カンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドール受賞作品。親の死亡届を出さずに年金を不正に受け取っていたある家族の事件から着想を得た物語。プライムビデオ配信中。 〇「そして父になる」('13) 是枝監督が赤ちゃんポストや養子縁組といった問題に興味を持つきっかけ、本作の起点になったという作品。プライムビデオ配信中。 ○「パラサイト 半地下の家族」('19) ソン・ガンホを世界的に有名にした作品。第72回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞、第92回アカデミー賞作品賞等4部門受賞作品。中盤からの場面転換が凄まじい。プライムビデオ配信中。 ◆評価(2022年6月24日現在) Filmarks:★×4.0 Yahoo!映画:★×3.4 映画.com:★×3.8 ◆概要 2022年・第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品、最優秀男優賞(韓国人初)・エキュメニカル審査員賞(人間の内面を豊かに描いた作品に贈られる)受賞作品。 【脚本・監督】 「万引き家族」是枝裕和 【出演】 「パラサイト 半地下の家族」ソン・ガンホ 「義兄弟 SECRET REUNION」カン・ドンウォン 「空気人形」(09年の是枝監督作品)ペ・ドゥナ イ・ジウン(IU名で活躍する人気歌手で、今作が商業映画主演デビュー) 「梨花院クラス」イ・ジュヨン 「愛の不時着」キム・ソニョン 【音楽】 「イカゲーム」チョン・ジェイル 【公開】2022年6月24日 【上映時間】129分 ◆ストーリー 古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョンと、赤ちゃんポストのある施設で働く児童養護施設出身のドンスには、「ベイビー・ブローカー」という裏稼業があった。ある土砂降りの雨の晩、2人は若い女ソヨンが赤ちゃんポストに預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づいて警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく赤ちゃんを連れ出したことを白状する。「赤ちゃんを育ててくれる家族を見つけようとしていた」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、サンヒョンとドンスを検挙するため尾行を続けていた刑事のスジンとイは、決定的な証拠をつかもうと彼らの後を追うが……。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆山場 「生まれてくれてありがとう」とソヨンが皆んなに伝えるシーン。間違いなくあれが、製作陣の1番言いたかった、作りたかったシーンだと思う。孤児と孤児院あがり、そして今から孤児になろうとしているウソンに向けたソヨンの言葉は、本作の取材で“生まれてきてよかったのか”と葛藤を抱える実際の孤児達に出会ったという是枝監督の思いが見えるよう。”捨てられたんじゃなく守られた”ソヨンが理想と語ったあの夫婦の言葉のように、どんな状況であれ、生きていていいんだと、なんだか心の温泉に浸かるような本作1番の山場だったと思う。 ◆対比 本作の1番始めのセリフは、スジン刑事の“捨てるなら産むなよ”。最後は同じくスジンの語りで“ウソンの未来を考える”。観客と同じ目線のポジションで描かれたスジンという人物が、映画を通じてソヨンの思いを知り、理解し、協力していく。母である事を辞めようとするソヨンと、母となる事を選択していく二人の対比が見事だった。 ◆家族 車内で本名を明かし合うサンヒョンとソヨン。5人にほのかな絆が生まれたそのシーンでは、差し込む日差しのもと、ソヨンが初めて笑顔を見せる。観覧車で互いを思いやる姿は、あの場では5人はもはや家族。ソヨンに目隠しをするドンスは、殺人を犯したソヨンを世間の目から守り、もう片方の手ではウソンを守るような、もう完全に父の姿。「万引き家族」では血の繋がらない家族の絆、「そして父になる」では子供を理解して初めて父であれた男の姿、「海街diary」では自己の居場所を問う姿と、徹底して“人”を描き続ける是枝シリーズ。本作ではウソンを巡ってじわりと形成されていく優しい“家族”の姿が、ラストのあの5人の写真に象徴されるように、丁寧な表現で描かれていたと思う。 引用元 https://eiga.com/movie/93673/ https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ベイビー・ブローカー
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