Comment
dreamer

dreamer

4 years ago

4.0


content

Yumeji

Movies ・ 1991

Avg 3.3

鈴木清順監督の世界には、常に麻薬もかくやの甘美な毒と仕掛けがあるが、この映画「夢二」は、観れば観るほど言いようのない飢餓感を覚える、すこぶるつきの大正ファンタジーの秀作だ。 では、なぜ飢餓感なのか? 咬み切れないからだ。 にも拘らず、華やかで鮮やかで妖しげで曰くありげで、観るほどに、また観たくなる。 その抒情的な美人画と詩歌で、大正から昭和にかけて活躍した竹久夢二の華麗な女模様を、虚実ないまぜのエピソードやイメージを交差させて進行していくのだが、まずそのエピソード等が、まるでジグソーパズルの欠片のように謎めいているのが、実にスリリングだ。 むろん、ラストには皆、収まるところに収まって、夢二と夢二を取り巻く世界が見えてくる。 それにしても、ストーリーを迷路へと押しやらずにはおかない怖いほど美しい、鮮やかな色彩の洪水は、遊び人風の夢二(沢田研二)すらパズル的人物化し、事実、この作品でストーリーを担って自らの意志で動いているのは女たちだけだ。 まず宿命の女・巴代(毬谷友子)がいる。 彼女は金沢の富豪(原田芳雄)の妻だが、不思議な因縁で夢二と深く関わることになる。 また、夢二の生涯の恋人・彦乃(宮崎萬純)がいる。 そして、コケティッシュなお葉(広田玲央名)がいて、夢二を嘲笑う女郎(余貴美子)に夢二を見守る女将(大楠道代)もいる。 かくて夢二は、女たちの間を転がりながら、自分を操る未知なる女の顏を探り出そうとするが、それぞれの女たちが抱く夢二像に逆に追い詰められていくのだった-------。 「ツィゴイネルワイゼン」「陽炎座」に続く、鈴木清順監督の大正三部作の完結篇で、ワクワクせずにはいられない心騒がせな映画だ。