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グザヴィエ・ドラン監督・脚本によって製作された2012年のカナダ/フランス映画 ・ 性同一性障害に悩み女性になりたいと願う主人公ロランスは、ある日を境に女性として生きると決意する。それを告白された恋人のフレッドは激昂するものの、ロランスを理解し共に生きようと心に決める。そんな2人の10年に及ぶ関係を描いた作品 ・ ドランの作品は1回見たぐらいで理解しましたとは言えないものだが、この作品を監督したのが23歳の時だっていうのは信じられない。おそらく普通の人とはその眼に映る世界がそもそも違っているのだろう。ドランが描き出す世界はいつも色彩豊かで美しい。急に差し込まれる心象風景の映像化。それはシュールでありながら心にドーンと衝撃を与えてくる。表現方法に才能を感じずにはいられない ・ ドラン作品は基本的にLGBTを扱った作品ばかり。今回は本人が出演せずに演出に力を注いでいるのもいい。ロランス役のメルビィル・プポー。決して美しいタイプではない男性が女性として生きていく。もちろん社会からの差別は計り知れない。恋人との関係、社会との関係に苦しむロランス。そんな難しい役をプポーはこなしているし、少しずつ美しくすらなっていく ・ こういった作品は主人公役の演技が際立つものだが、恋人フレッド役のスザンヌ・クレマンの演技は負けてないどころか主人公を喰ってるレベル。恋人が女性になりたいと言い始めたら混乱するに決まってるし、フレッドの人生設計はめちゃくちゃ。ロランスと人生の間で揺れ動きまくるフレッド。この演技は素晴らしかった。脇役だけどロランスの母親役のナタリー・バイの演技も光っている ・ グザヴィエ・ドランの描いた愛の形。さらけ出し、包み込み、拒絶し、それでも欲する愛。理解するのは難しい愛の形かもしれないが、男と女の愛は普遍的なテーマだし、その形が多少歪でもそれは変わらない。結局のところ悩みまくるしかないのだ。この作品の答えはグザヴィエ・ドランらしい終わり方とだけ言っておきましょう。グザヴィエ・ドラン作品は万人受け映画ではないけど、哀しくも美しい映画を1度ご覧ください
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