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【思い出映画】 ◇“ああ、映画を観たなあ”という満足感に浸った映画◇ ★死ぬまでに観たい映画1001本《第4版》選出★ 文句なしの傑作。 映画館で観終わった後、“ああ、映画を観たなあ”という得も言われぬ満足感を覚えた映画は後にも先にもこれ一本。 本作を観た後で、ジェームズ・エルロイの原作小説を読んだのだが、それを踏まえたうえで言うと、この原作小説をまともに映像化することはまず無理。そもそも2時間やそこらの時間では到底収まらない。ならば映画はどうしたか。長大で濃密な原作小説のディテールを無理に追うことをせずに、エド・エクスリー、バド・ホワイト、ジャック・ヴィンセンスという3人の男に焦点を当てた。これが見事にハマっている。3人の男が巴戦の如く織り成す相克が、映画をがっつり観応えのある傑作に押し上げている。彼らを演じたガイ・ピアース、ラッセル・クロウ、ケビン・スペイシーが素晴らしかったのは言うまでもない。 またガイ・ピアース、ラッセル・クロウは本作の時点ではまだ無名に近い俳優だったのだから、この2人を抜擢した製作者の眼力もたいしたものだ。 本作はその年のNYならびにLAの批評家協会賞で作品賞を受賞。しかしアカデミー賞では9部門でノミネートされるも対抗馬に『タイタニック』というモンスターがいたために、脚色賞と助演女優賞の2部門の受賞に留まった。ただ脚色賞を獲ったという点で、やはり作り手の方向性は正鵠を射ていたということだ。 ちなみに劇中、エドの殉職した父親(原作では健在)のエピソードの中で出てきて、後々の展開の大きなポイントとなる【ロロ・トマシ】は原作にはない映画のオリジナル。これは見事だと思う。 ただ一点、キム・ベイシンガーが助演女優賞を受賞したのだが、個人的には正直そこまでいいとは思わなかった。逆に男三人衆がノミネートすらされなかったのが今でも納得いかない。
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