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てる

てる

4 months ago

4.0


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Lunana: A Yak in the Classroom

Movies ・ 2019

Avg 3.8

非常に静かでシンプルな作品だった。 ぶっちゃけ内容としてはよくある内容なのだ。つまらないわけではないが、特別秀でている脚本ではない。引き込まれるのは映像だ。ブータンの穢れのない雄大な自然がとてもとても美しい。たしかに、あそこにいれば、心が浄化されるのも頷ける。 国民総幸福量がかつて上位であったブータン。日本でブータンといえばそのイメージしかないのではないだろうか。あまり馴染みがない国だ。 この国の国民総幸福量は年々順位を下げている。それは、グローバル化が進んでいるからだ。 この国はかつてはインターネットもなく、外界からの情報を全く受け付けなかった。だからこそ国民は自分たちの身近なもので満足し、幸福を感じていた。だが、グローバル化が進み、外界からの強い刺激を受けるようになった。だから、若者たちには今の暮らしは刺激が少なく、退屈な日々に感じられてしまう。 主人公のウゲンはまさに今のブータンの若者なのだろう。自分の住んでる所は田舎で楽しいものなどない。こんな田舎で教員なんて仕事をやったところで意味なんてない。自分はこんな所で埋もれる人間ではないんだと思っているのだ。 ギターを奏で、友人にもてはやされ、オーストラリアに行くんだと夢を語る。それは世間の広さも知らない井の中の蛙に過ぎず、粋がってしまっている若者なのだ。観ていて、恥ずかしいというか痛々しい。 そんな可愛くないイキっちゃってる若者が、辺境の地へ赴任することになる。携帯も使えない地で暮らすことにすぐに音を上げてしまう。そもそも道中ですら音を上げそうになっていた。 まぁ気持ちはわかるけどね。国内なのに移動だけで1週間もかかる場所って物凄い辺境の地だよね。よく人間が住んでるなと思わされるような場所だよね。日本の限界集落なんて目じゃない。 でも、そんなところだからこそ、いや、そんなところでしか出来ない体験がある。 帰る気まんまんで優雅に寝ていたら扉をノックされる。扉を開くと可愛らしい女の子が立っていた。すると、あっさりやる気を出して、熱心な教師に早変わり。 村の大人からは貴賓扱い。皇太子がきたようなもてなし方だ。それにあんな可愛い女の子が迎えにくるなら頑張ろうかなって思うよな。元々、承認欲求の強いタイプではありそうだしね。 いずれにしろ、彼の態度は大きく変わった。そこにいやらしさは感じない。やる気のなさそうな嫌味な表情は消え去り、穏やかで心優しい教師の顔になっている。その急激な変化にやや面食らうが、彼もまたブータンという美しい国で育った1人の青年であるのがわかる。 白紙に黒板など、教材のために努力を惜しまない。自らの部屋の物すら教材に替えるその利他的な姿勢は教師の鑑だ。 音楽のことも忘れてはいない。ギターを弾き、子どもたちと演奏する。平和で心温まる画だった。 最後はオーストラリアに行ってしまった。村に残るかなと予想したが、そうではなかった。 彼にとってこの教員の期間はどのような影響を与えたのだろうか。 道中の祈りを忘れず、自然の美しさに目を細めていた。それは大きな変化だ。 以前はイヤホンを耳に付けながら歩き、いつになったら着くのかと不満をたれていた。自然や神に対するリスペクトもない。その彼が様々なことを慈しんで歩いているのだ。驚きの変化だ。 それでも彼はオーストラリアに行ってしまった。変わっていないのかもしれないなんて、ほんの少し思ったが、そんなことはなかった。オーストラリアの土地で、ブータンのことを忘れず、リスペクトを捧げている。その優しい旋律にオーストラリアの酔っ払いたちも思わず耳を傾けていた。 あの数カ月はウゲンにとってかけがえのない時間で、人生においての1つのターニングポイントだったのだ。 子どもたちや村の人の別れは辛いだろうが、彼の胸の中にはいつまでも残っているだろう。ウゲンにはその特別な別れは彼の成長に必要な糧だったのではないだろうか。 それもこれもブータンの美しい風景と素朴で純粋な村の人々のおかげだ。あの雄大な大自然の中で過ごせば、あっさり毒気を抜かせてもらえそうだ。 今の日本にもデジタルデトックスが出来るような土地が必要かもしれない。そんなことを思わされる作品であった。