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Till

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4 years ago

3.5


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The King's Man

Movies ・ 2021

Avg 3.5

マシュー・ヴォーン監督が手掛ける『キングスマン』シリーズの第3弾。 本作は前2作の前日譚であり、第一次世界大戦前夜のヨーロッパを舞台に、独立スパイ機関「キングスマン」の誕生秘話が描かれる。当然のことながら、エグジーもハリーも過去作に登場するキャラクターは全員不在、時代設定も大幅に変更されるわけなので、今までの『キングスマン』とは少し趣向が異なってしまうのは避けられない。実際、かなり雰囲気が変わっており、全体的にシリアス調に仕上げられているだけでなく、「軽快な音楽に乗せて繰り広げられるバイオレンス・アクション」「毒っ気たっぷりの悪ノリジョーク」といったような“キングスマンイズム”、もっと言えば“マシュー・ヴォーンイズム”も希薄になっているため、その点でやはり物足りなさは感じてしまうだろう。 それでも、一つの映画としてはちゃんと面白い。マシュー・ヴォーン監督の過去作『X-MEN ファースト・ジェネレーション』同様、「歴史的事件の裏で実は彼らが暗躍してました」という史実とフィクションを上手い具合に絡めた脚本が見事。サラエボ事件でオーストリア=ハンガリー帝国の皇太子フランツ・フェルディナント夫妻を暗殺したセルビア人の青年ガヴリロ・プリンツィプや第一次世界大戦中にスパイとして活動していたとされ、現在は女スパイの代名詞的存在にもなっているマタ・ハリ、そのほかレーニンやエリック・ヤン・ハヌッセンなど実在する人物も多数登場するのだが、中でもラスプーチンの存在感は抜群。この人はそのいかにも怪しい風貌や謎めいたキャラクター性、また「青酸カリを飲んでもぶん殴られても銃で撃たれても死ななかった」というマンガのような伝説まで残しているため、あらゆるフィクション作品のヴィランとして度々使われるのだが、本作でも見事な悪役っぷりを披露している。 ただ、流石にイギリスに都合良く歴史を解釈しすぎではないだろうか。世界史を勉強したことがある方なら頷けると思うのだが、アヘン戦争然り、第一次世界大戦時の三枚舌外交然り、イギリスって卑劣な政治を行ってる事が多い。本作を観た限りでは全くそんな印象は受けられず、むしろヒーローのような扱いをされており、逆にロシアやアメリカが侮蔑的に描かれているのは残念。史実重視で見てしまうと、ここら辺の配慮のなさは若干引っかかってしまう。 エンタメ作品としては面白いが、最終的に息子に戦わせたかったのか戦わせたくなかったのかが曖昧になっている点、「戦わないために戦う」というストーリー上、結果的に戦うことを肯定している印象を与えかねない危うさを含む点(製作者に全くその意図はないと思うが)で反戦映画としても少し難があるので、あまり真面目に考えすぎず、あくまでファンタジーとして割り切って観ることをお勧めします。