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てる

てる

2 years ago

4.0


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Tigers Are Not Afraid

Movies ・ 2017

Avg 2.6

ホラーというより社会派な作品だったように思える。 舞台はメキシコだ。メキシコは麻薬戦争勃発以降に多くの死者、行方不明者が出ている。物語の冒頭で学校が銃撃され、学校の帰り道で死んでいる男が横たわっている。家に帰り着いたら母がいない。 それにしてもメキシコの治安が悪すぎる。いつ誰がどこで死んでもおかしくない。そんな情勢の中だからこそなのか、ギャングは人を拐い、人身売買や臓器を取り除いて捨てるといった悪魔的な方法で金を稼いでいる。この国の警察機関が機能していなさすぎるだろ。 この冒頭はなかなか衝撃的ではあったけれどもメキシコの情勢を知るには充分であった。 ストリートチルドレンになってしまったエストラヤだが、彼女の身に起きたこの不幸が割りと平然とあり得るという世界観が恐ろしい。 この作品は幽霊などのオカルトホラー的な恐怖よりも、死が常にそばにある。いつ死んでもおかしくないという方が恐ろしい。 エストラヤのような理由でストリートチルドレンになってしまう子どもがいくらでもいるのだろう。そのストリートチルドレンになってしまった子どもたちはその後どういう将来が待っているのだろうか。私は彼らがまともに社会を渡っていけるようには思えない。 学校は行方不明になった子どもに対して何か手を差しのべているのだろうか。突然学校に来なくなった彼女の家に行ってももぬけの殻だ。それで終わってしまうのだろう。 あぁ、また1人いなくなってしまった。悲しいね。 それだけなのだろう。日本では警察沙汰になるが、メキシコではそうならないのだろう。恐ろしい。 3つの願い事とエストラヤの霊感。これがこの作品をホラーであり、ファンタジーにしている要素だ。 チョークに願い事を込めると願いが叶う。しかし、悪いことも起きる。猿の手のようだ。猿の手は私利私欲にまみれた大人が成敗されるけど、エストラヤは違う。純粋な子どものささやかな願いだった。しかし、過酷な環境で生きている彼女らの世界では、願いのその残酷な返答もしっくりくる。 エストラヤの霊感はお母さんが亡くなってから目覚めたのだろうか。それとも願いが関係しているのだろうか。追ってくる血の筋との関連はよくわからなかったけど。 お母さんと少年たちの幽霊が見えるようになっていた。お母さんはおどろおどろしかったが2人の少年はそうでなかった。ただ、悲しさは募る。見えない方がよほど良かったのではないかと思ってしまった。 それにしても、幽霊の描き方が日本とはだいぶ違っていた。お母さんは完全に怨霊になっていた。始めはお母さんじゃなくて死神かと思った。まぁでも死神みたいなもんなのかな。 どちらかというと、復讐よりも娘を心配して出てきたという方を期待していた。天涯孤独になった娘を心配するよりも自分を殺した男に復讐する方が大事なのか。どれほど憎かったのだろうか。お母さん怖すぎ。 チョークで線を引くと、そこから血が追ってこなくなった描写もよかった。日本でいうところの結界なのだろう。それともチョークの力なのだろうか。陰陽師のようなあのシーンはかっこよかった。 少年たちの青春の描写もよかった。頼れる大人もおらず、子どもだけで必死に生き抜いている彼らだが、虎の作り話をしたり、廃墟ではしゃいだりと子どもの一面が伺える。常に気を張って、動物のようであるけど、そういう一面があると本当に子どもなんだなと感じる。それがまた物悲しくなるのだけど。 携帯を手離さない理由に泣きそうになった。なぜ頑なにその携帯にしがみついているのか不思議だった。まぁ子どもだし、謎の執着があるのかと思ったら、まさかの理由で思わず目頭が熱くなった。 そうなんだよね。この子たちって子どもなんだよね。本来であれば親がいて、親がたっぷり愛情を注いでいるはずだ。まだまだ甘えたい盛りだろうにストリートチルドレンとして生きている。それだけで泣けてくる。 面白い作品だった。メキシコのストリート事情と死者との関係性を知る興味深い作品だった。 ただ、邦題が悪すぎる。この邦題だと興味をまるで引かない。某かの賞を受賞しているという触れ込みがあったからこそ観たけど、そうでなかったらスルーしていた。もっと多くの人に評価してもらえる作品なのに、もったいない。 この邦題を付けた人は深く反省するべきだ。あなたのせいで日本では評価されてないんですよ。血が追いかけてきますよ。気をつけてくださいね。