
ひろ

Equinox Flower
Avg 3.7
「極楽とんぼ」の作家・里見とんの原作を、監督・小津安二郎、監督と野田高悟の共同脚本によって映画化した1958年の日本映画 ・ 大手企業の常務である平山渉は、旧友の河合の娘の結婚式に、同期仲間の三上が現れないことを不審に思っていた。実は三上は自分の娘・文子が家を出て男と暮らしていることで悩んでいた。平山は銀座のバーで働いている文子の様子を見に行く。その一方で平山は長女・節子の良縁に思いをめぐらしていたが、突然会社に現れた谷口から節子との結婚を認めてほしいと頼まれ…。 ・ 父親と娘、娘の結婚は小津作品に何度も描かれているテーマ。しかも、娘の結婚に反対する父親というのは、いまだに続く普遍的なテーマだ。幾度となく描かれてきたテーマで、内容も予想がつくのに、小津作品はやはり想像を超える。小津調と言われる独特の演出が映し出すのは、人間の表面だけでなく、見えないものも映し出しているように思える。 ・ 小津監督初のカラー作品ということで、気合いが入っていただろう。映像作家にとってモノクロからカラーへの移行は、無限の可能性を感じたに違いない。わざわざ赤が映えるドイツのフィルムを使っていることからも気合いの具合がわかる。赤をポイントで使っていた小津監督の原点となる作品だ。 ・ 佐分利信の典型的な厳格な父親はイラッとするもののうまかった。昭和の大女優である田中絹代の母親役は貫禄があった。女性の映画界における地位を高めた偉大なる人である。中井貴一の父親である佐田啓二や小津作品に欠かせない笠智衆も安定感がある演技だった。 ・ いつもなら原節子がやりそうな長女の役を有馬稲子が演じているが、松竹のトップスターらしい華がある女優だから文句なし。大阪の口うるさい佐々木初も杉村春子が演じそうな役だが、浪花千栄子が演じている。オロナミンCのホーロー看板に写っている人です。 ・ そして、松竹の作品なのに大映のスター女優・山本富士子が出演している。昭和の美人の代名詞と言われただけあって、スクリーンに存在するだけでオーラを感じる女優。出演の見返りに、小津監督は大映で映画を撮った。 ・ このように、昭和の映画界は監督も俳優も映画制作会社の専属であることが多かったので、監督や出演している俳優でどこの会社の作品か大体わかる。小津監督クラスの人になると、他の会社の俳優を使ったり、他の会社で作品を作ったりもしていた。こういった昭和の映画界の仕組みを踏まえて作品を観ると、より楽しめるんじゃないかな。