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YOU

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4 years ago

3.0


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The Wages of Fear

Movies ・ 1953

Avg 3.6

Nov 24, 2021.

アンリ=ジョルジュ・クルーゾーが監督・共同脚本を務めた、1953年公開のサスペンス作品。 ジョルジュ・アノーの小説『Le Salaire de la peur』を原作とする本作では、油田で起きた火災を消し止める為に4人の男達が危険なニトログリセリンを運搬する様子が描かれます。本作のリメイクである1977年の「フリードキン版」があまりにも面白かったので、こちらも翌日早速観てみました。当然大筋は全く同じなので今回も手に汗握る展開の連続にはめちゃくちゃハラハラさせられますし、前半1時間を使ってたっぷりと描かれる日常描写からは彼らが抱える社会への憤りや窮屈さ、自由を求める切実な気持ちが痛いほど伝わってきます。最後に待つ皮肉な顛末とその後味なんかも大好物ですし、「サスペンス映画の古典的名作」として名高い一作というのも存じ上げております。しかし個人的に本作は、少なくともフリードキン版と比べれば圧倒的に乗り切れない一作でした。その最大の要因は「主人公マリオの人物造形」です。当然これは最後のオチまで含めたテーマ性故の造形ですし自分もそこは重々承知しているのですが、それにしてもこの人ちょいと問題あり過ぎやしませんか。恋人・リンダへの接し方もさることながら、特に酷いのは相方ジョーに対する態度や言動。ジョーさんも決して善人ではありませんが、主人公マリオは年老いた彼を高い崖から突き落としたり、石を顔面に投げ付けたり、沼から抜け出せない状態の彼をトラックで轢き殺そうとしたりと、想像を絶する当たりの強さを見せます。そして極め付けはトラックで沼を渡り切った後に発される驚愕の責任転嫁!この言い草、この冷徹さ、この白々しさ、同シーンを以て本作はサスペンスからサイコスリラーへと変貌を遂げました。 これらの酷い言動の数々は「極限状態における人間性」をリアルに描写しているとも言えますし、確かにヴィトー・コルレオーネばりの大物を気取っていたくせに初っ端から恐怖のあまり体調を崩した役に立たずのジョーが自分と同額の報酬を手にすると思うとイライラしてくるのも分かる。しかしマリオは普段からも恋人リンダをモノのように扱っていましたし、(そうした時代性も込みで)やはり自分はそんか主人公がはっきり嫌いです。また物語に関しても、本作の「酷い奴には酷い結果が待っている」という単なる因果応報な顛末よりは、フリードキン版の「(少なくとも輸送中は)主人公を切実に応援出来るような、物語的希望をほのめかす演出」の方が自分は断然好みです。ただ自分がこうして激賞するフリードキン版は本作がサスペンス映画の名作としてその地位を確立しているからこそですし、貧困問題や労働搾取といった社会的テーマはこちらの方がより濃密に描かれています。前述した時代的価値観も含め、今の視点で観てみると更に色々な思考を巡らせる作品だと思います。 家に帰るまでが遠足。