Comment
ひろ

ひろ

9 years ago

4.0


content

An Autumn Afternoon

Movies ・ 1962

Avg 3.6

監督・小津安二郎、脚本は監督と野田高悟の共同執筆によって製作された1962年の日本映画。小津安二郎監督の遺作でもある。 ・ 長男の幸一夫婦は共稼ぎしながら団地に住んで無事に暮らしているし、家には娘の路子と次男の和夫がいて、今のところ平山にはこれという不平も不満もない。細君と死別して以来、今が一番幸せな時だと言えるかもしれない。中学からの旧友との酒の席でも24になる路子を嫁にやれと急がされるが、平山としてはまだ手放す気になれなかった…。 ・ この映画の翌年の60歳の誕生日に亡くなった小津監督。完璧主義者だった監督らしい最後だと思うが、最後の作品もやはり完璧だ。ずっと描き続けてきた父と娘、娘の結婚などのテーマも盛り込んであり、監督最愛の女優・原節子こそ出演していないけど、小津映画のオールスターと言っていいような顔ぶれ。 ・ 赤色が好きな小津監督が好んで使ったドイツの赤が映えるカラーフィルムによって、全体的に赤みがかっていて味がある。特に人間に温もりを感じる。小津作品らしい軽妙な台詞も最後まで変わらない。小津作品の日本語は、いまの時代の日本語にない感動がある。 ・ 親は娘を嫁がせるのが務めといった時代だけに、いつも見合い話が持ち上がるが、嫁がせる父親と嫁ぐ娘の心情が伝わってきて切なくなる。団地暮らしの長男や同級会の連中から、時代の雰囲気が伝わってくるのも面白い。無理してゴルフクラブを買おうとするのとかは、今のサラリーマンと変わらなくて笑える。 ・ 小津の分身であり、日本の父親像を体現し続けた笠智衆はもちろん父親役。やはりこの人は最高の父親だった。中村伸郎と北竜二の旧友コンビはコミカルで楽しい。長男を演じた佐田啓二も杉村春子や加東大介といった名優も、しっかり自分の個性を出している。 ・ そんな中でも、小津安二郎永遠のヒロインである原節子に代わってヒロインの座を掴んだ岩下志麻は初々しくて目立っていた。小津監督が最後に見出だした才能だけに、その後の活躍は当然の結果だろう。脇役だけど、若々しい岸田今日子も個性的で印象に残った。 ・ 60歳という若さで亡くなった小津安二郎監督。これだけ質の高い作品が遺作だというのが、あまりにももったいない。まだまだたくさん名作を作ってもらいたかった。もう亡くなってだいぶ経つから、作品の多くは安く手に入るので、日本映画史に残る名監督の名作を楽しんでもらいたい。