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てる

てる

2 years ago

3.5


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At Eternity's Gate

Movies ・ 2018

Avg 3.2

何を隠そう私はゴッホファンだ。ゴッホ展にいき、その時にスマホで撮ったひまわりの画像を待ち受けにしている。 ゴッホが描いたひまわりを初めて見たときに衝撃を受けた。まず一番始めに思ったのは、なんて下手くそなんだろうという驚きの感想だった。遠近法とか光の方向性とか絵具の厚塗りの仕方等々、他に飾ってある静物画に比べるとその実力は明らかに劣っているのがわかる。 しかし、あそこに展示されていたどの作品よりもインパクトがあった。それは絵の構図なのか、色使いなのかわからない。ただただ圧倒された。私はその絵の前からしばらく離れられなかった。とてつもなく印象的でとてつもなく魅力的だった。 かくして、ゴッホの大ファンになってしまった私にはこの作品は少々退屈であった。Wikipediaをなぞったような話しだと思う。独自の解釈とかオリジナルで加えたエピソードはあるはずだが、私が驚くような話しはなかった。良くも悪くもファンの期待を裏切らない作品ではある。だけど、想像の粋を越えない無難な作品だった。 ウィレム・デフォーのお芝居はよかったのだけど、彼だと歳を取りすぎている。ゴッホが亡くなったのが37歳で、ウィレム・デフォーがこの作品を演じていた撮影時で60歳を越えている。元々老け顔のデフォーさんはおじさんどころかおじいちゃんに見える。 でも、時折とても若々しくて、幼いように見えるから不思議だ。俳優ってすごい。 私が想像するに、ゴッホは発達障がいを抱えていた。精神疾患で精神病院に入院していたが、それ以前からおかしかった。耳を切り落として娼婦に渡すという常軌を逸した行動により入院するはめになったが、それは異常性が表に出ただけなのだ。彼は産まれ持っての異常性を秘めていたはずだ。 それは彼の絵を見てみるとわかる。彼は明らかに異常だ。そして、その異常者が描いた絵が世界中の絵画ファンを魅了してやまないのだ。発達障がいや精神疾患を抱えていた彼だからこそ見えた景色があって、その景色を彼だからこそ素直に描けている。ゴッホにしか描けない絵なのだ。 ゴッホは37歳という若さでこの世を去った。画家としては10年くらいのキャリアしかない。 たった37歳だ。死ぬのには早すぎる。まだまだこれから多くの絵画を残してほしかったと思う反面、その死がミステリアスだからこそ人気を博したのかもしれない。彼の死はいまだに謎が多い。その死があったからこそ、100年以上前の遠い地の画家が有名になったのかもしれない。 この作品でのゴッホの死は、何者かに銃殺されている。撃たれる寸前まで描いていた絵を犯人たちが埋めているカットがあるが、ゴッホが描いていた絵に不都合な事情を持つ者がいたのではないか。某かの事件に巻き込まれてしまったのではないか。ゴッホがその2人の素性を語らなかったのは、犯人を庇ったのではなく、常に死を意識していた彼はその死を誰かの責任にしたくなかったのではないか。その突発的な死をすんなり受け止めてしまったのではないか。と私は想像した。 でも、個人的にはゴッホの死を描くならばもっと明確にしてほしかった。この作品はゴッホの死に方を描く物語ではないわけだし、あれくらい曖昧なら描かないでほしかった。 実は犯人はゴーギャンだったとか、弟のテオだったとか、衝撃的な真実だったならそれはそれで受け止められたのになぁ。 ウィレム・デフォーの芝居はよかった。繊細なゴッホの心情を見事に演じていた。実際のゴッホよりも随分と年齢に誤差があるけども、彼以上にゴッホをこれだけ上手く演じれる役者はいない。この作品で様々な賞を獲得しているのも頷ける。 映像も綺麗だった。麦畑のシーンは記憶に残っている。 ただ、やはりもう一押しほしい。良作ではあるのだけど、名作になりきれないのはそこのもう一捻りなのだ。 期待していただけに落胆が大きい。やはりゴッホを映画化するのは難しいのだろう。世界中に彼のファンがいるだけに突拍子もないことは出来ないし、無難に納めてしまうのだろう。 うーん。どうにももやもやする。