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寡作の是枝監督が、前作とは間をおかず撮ったということと、いわゆるラブ・ドールが心をもって動き出す・・ということから、筆休めのキワモノか・・と思って観たが、とんでもない。至極真っ当なファンタジーであり、生と死というテーマのメッセージ・ムービーであり、そして究極の性描写を伴った恋愛映画でもあると思う。 まず、ファンタジーに登場する妖精として、ペ・ドゥナはまさしくそのものであり、たどたどしい日本語は、言葉を学習する人形としてはまり役である。 また、数多の人々が生を得ている都会の群像と、図らずも心を持ってしまった(というより生を得てしまった)人形とそこに住む人々の関係を並列に描いており、「生きている」という愛おしさが美しい音楽と共鳴して響いてくる。特に、ベンチで出会った老人が語る、「かげろう」の話は、人間を含めた生物が何のために生きて、何のために死ぬのかという問いかけにも聞こえる。 そして、究極の性描写に圧倒される。心が空ろな男と、肉体が空ろである女・・・であるのだが、男が空気を抜いて「死にそう」になる女に、「息」を注入する。女は息を注入されるたびに悦びと共に再生する・・という、もはやこれ以上の性愛表現はないのではないか・・と思わせる。 ラストのロウソクを吹き消すシーンは、老若男女を問わず涙が出るシーンだと思った。
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