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HRK

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8 years ago

5.0


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Cries and Whispers

Movies ・ 1972

Avg 3.7

オールタイムベスト。良家の次女の死を看取る三人の女性の心理と互いの愛憎を描く。 赤色に彩られた不安な気持ちにさせられる画面が印象的。キツい色使いが違和感を催させながらも、人物の衣装に見られる白色などで美しくまとめあげられている。 彼女たちの心理を描くため、違和感を持つように促す演出が多くとられている。例えば、長女と夫の食事中にワイングラスが軽く倒れただけで割れる(大きさからして考えられないほどグラスが脆い)場面がある。割れることは当然結婚生活が危機的な状況にあることに連なる。また、無言が続く食事の場面において、それは沈黙を不自然に破る音であり、中年に至ってなおぎこちない結婚生活であることが示されている。 次女の死を迎えるという本筋とは別に、三人の女性にそれぞれパートが割り当てられ、回想が虚実交えて描かれる。中には、次女が蘇るという虚構としかとれない場面も挿入されている。また、例えば、長女の回想の中には彼女がワイングラスの破片で自らを傷つけるという場面が用意されているが、これも現実に起こったことととらなくても良さそうである。この場面は、先に触れたワイングラスが倒れ中のワインが溢れる場面に連続するが、この並びはワイングラスの破片と血を思い出させる。ワイングラスが割れたことが現実には起こり得ないことだとすると、自らを傷つける場面も現実に起こったことととると不都合だと思われる。なお、この場面は後にミヒャエル・ハネケが『ピアニスト』の中でオマージュを捧げているが、その際には現実の行為として描かれている。 ベルイマンで女性だけが登場する作品といえば『仮面/ペルソナ』も有名だ。こちらも私にとってはオールタイムベストに加えたいくらいに好きな映画だが、本作とはラストが対照的でちょっと面白い。叶わなかった愛の舞台であった屋敷を出て自分一人の生活に戻って行くのに対し、本作ではこの家のメイドは屋敷にとどまる。今は亡き次女の日記を紐解き、在りし日の幸福に想いを馳せる。そして、安息のうちに映画は終わる。果たしてどちらの方が幸せな終わらせ方だろうか。