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大河ドラマに魅力を感じた事が殆ど無く寧ろ退屈だったが『韋駄天』には痺れている。俳優陣の演技からは相乗効果による熱量を感じるし、脚本も撮影も音楽も素晴らしい。セットもロケも素敵で金栗四三が縦横無尽に走る様は本当に明治を駆けているかのようだ。更に脚本の素晴らしさ。縦糸に金栗四三のオリンピック噺で、横糸には毎話に江戸落語のモチーフが散りばめられている。普通の脚本家は縦糸だけで精一杯なのでは無いだろうか。多分、歌舞伎ネタも更に練り込まれているのだろうけれど、生憎自分は歌舞伎は無案内なので気が付けない。なので江戸落語を知っている人は本筋以外にも楽しめる点が多い。と言うか知らないと、ドラマ内の北野武演じる志ん生の弟子の「五りん」の様に面白さを捉える事ができないかも知れない。クドカンの「わかる人にわかれば良い」スタンス。このスタンス悪くない。それに、落語を解さない人の反応を五りんを通して見せる辺り面白い。今ネタやったんだよって視聴者に教える感じ面白い。観る側が何も考えないでいられるドラマが量産されて久しいが、観客にアクティブな知識と思考を視聴者に求める作品が私は好きだ。怠惰した頭脳を働かせる『いだてん 〜東京オリムピック噺〜』は未来に再評価される作品だと思う。普通のドラマさえ魅力を感じぬ夫までも熱中している。普段大河に魅力を感じない人を掘り起こしていると思う。視聴率が良くないそうだが、逆に普段大河を「史実」と捉え教育番組としてを観る層は脱落したのかも。でも大河ドラマはそもそもフィクションで史実ではないし、歴史は文学を経由すると史実では無くなるものだ。このドラマ観ないと勿体ない。 古今亭志ん朝と志ん生を筆頭に落語を聴き返してみたら、たけしは声と江戸弁が似ていた。今まで全く気が付かなかった。
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