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パリで評価されない画家フィンセント・ファン・ゴッホは暗く寒い部屋で苦しみながら絵を描く日々だった。 明るい光の中で絵を描きたいと願うフィンセントは知り合った画家ゴーギャンの薦めで南仏、アルルの村に移る。 黄色い家で暮らし、太陽がたくさん降り注ぐアルルの大地、草原、丘陵地帯で自然の風景を描き続けるフィンセント。 そんな彼が亡くなるまでのお話。 と言っても、享年37歳って若過ぎる死です。 ゴッホと言えば亡くなってから評価された画家という印象しかなかったけれど、幼い時から精神に病を抱えていてその生き辛さが全編から伝わってきました。 独特なアングルを手持ちカメラで追う撮り方…ちょっと酔ってしまいそうな画面だけれど、フィンセントの苦悩の表情やイーゼルなど画材を背負って歩く姿がとても印象的。 描くことに没頭するあまり、数々のトラブルから何度も病院に入れられたり。 そんなフィンセントを支える弟テオの存在やアルルの宿のジヌー夫人。 (ジヌー夫人の肖像画は『アルルの女』で有名) 一時アルルで一緒に暮らしたゴーギャンとの決別は描き方の見解の相違なのに、精神的に不安定なフィンセントには辛かったのだろう。 「君の描き方は違う。速くて塗り重ねている。絵と言うよりも彫刻だ。」と辛辣なゴーギャン。 有名な「耳削ぎ事件」や銃で撃たれ亡くなる最期、それらの真実は今でもいろんな説があると言う。 でもフィンセントが遺した数々の絵はずっとこれからも世界中で鑑賞されるのです。 作中でフィンセントが牧師(マッツ・ミケルセン)に言ったのが「未来のために神は僕を画家にした」とはまさにその通りですね。 彼はアルルに暮らした時に風景画を多く描いています。 「収穫」や「夜のカフェテラス」が好きですが、大地に咲くアーモンドの花の絵も大好き。 そして何と言っても、フィンセント役のウィレム・デフォーが「ゴッホ」そのもので、苦悩の連続の人生を演じきっていて見事でした。 「考えることをやめるために絵を描く」…そんなフィンセントがアルルのお日様に当たる一瞬だけでも幸せだったら良いな…。 そんな事を感じた作品でした。
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