Comment
てっぺい

てっぺい

2 years ago

3.5


content

The Legend & Butterfly

Movies ・ 2023

Avg 3.1

Jan 27, 2023.

【レジェンド映画】 徹底的に振り切った解釈で描く事で、小難しい史実が見やすく様変わり。東映70周年の冠で20億円を投じた大作は、製作陣と出演陣の工夫が至る所に見えてくる。これこそ歴史に名を残す伝説となるだろう一本。 ◆トリビア ○ タイトルの「レジェンド」は織田信長のことであり、「バタフライ」は「帰蝶」という呼び名があったと言われる信長の正室・濃姫を意味する。(https://ja.m.wikipedia.org/wiki/THE_LEGEND_%26_BUTTERFLY) ○ 本作の撮影中に木村拓哉は、信長がその生涯を終えた49歳という年齢を迎えた。木村家の家紋も“織田木瓜”で縁を感じたと話す。(https://legend-butterfly.com/magazine/magazine01.html) 〇綾瀬はるかは、乗馬、殺陣、舞い、弓といった技術を身に着ける所から役の準備を始めた。「二人は政略結婚でしたが、夫婦の形や感情は今も昔も変わらないもの。信長も濃姫も私と同じなのだと思いました」と話す彼女を、大友監督は「受けの達人」「底なし沼」と評した。(https://spice.eplus.jp/articles/312933) 〇東映の社長は、総製作費20億円の本作の稟議に判をつくときに手が震えた。(https://legend-butterfly.com/magazine/magazine01.html) ○木村拓哉と伊藤英明が参加した「ぎふ信長まつり」は人出が46万人に。「岐阜市の人口の2倍の応募が殺到」「当選枠800人に対して12万人以上の応募」「岐阜県で往復はがきがなくなった」などと連日多くのニュースが報道された。(https://legend-butterfly.com/magazine/magazine01.html) ○ 信長と濃姫の初夜のシーンは、監督がなかなかカットをかけず、着物が破れたり、人が入り乱れたり、アドリブだらけでぐちゃぐちゃになった笑。(https://www.fashion-press.net/news/97123/2) ○ 木村拓哉はTBSドラマ「織田信長 天下をとったバカ」でも織田信長を演じた事がある。なお、その時の濃姫役は本作で濃姫の侍女役の中谷美紀だった。(https://legend-butterfly.com/magazine/magazine06_1.html) 〇大友監督は、東映京都撮影所のクランクインに際して、1926年から続くその歴史に触れるため、同所で撮影された映画約200本を鑑賞して臨んだ。(https://eiga.com/news/20230124/19/) 〇ロケ地は全国31カ所で、重要文化財や国宝とされる場所がほとんど。映画では初めて使われた国宝・朝光寺をはじめ、仁和寺、泉涌寺、妙顕寺、彦根城、神護寺、明石城など。(https://eiga.com/news/20230124/19/) ○本作に登場する南蛮船は、宮城県石巻市で93年に作られた復元船。解体予定だったが、県からの許可がおり、特別に解体期間中に撮影できた。(https://www.fnn.jp/articles/-/477049) 〇本作とのコラボ企画、無料Web検定「信長家臣団テスト」が実施中。問題の正解数をもとに、信長の家臣としてのレベルを診断してくれる。(https://www.kentei-online.com/nobunaga/legend-butterfly) ◆概要 東映70周年記念作品として総製作費20億円を投じて製作。(邦画の平均制作費は5000万円程度と言われる) 【脚本】 「コンフィデンスマンJP」シリーズ 古沢良太 【監督】 「るろうに剣心」シリーズ 大友啓史 【出演】 木村拓哉(東映映画初出演)、綾瀬はるか、宮沢氷魚、市川染五郎、斎藤工、北大路欣也、伊藤英明、中谷美紀 【公開】2023年1月27日 【上映時間】168分 ◆ストーリー 格好ばかりで「大うつけ」と呼ばれる尾張の織田信長は、敵対する隣国・美濃の濃姫と政略結婚する。信長は嫁いで来た濃姫を尊大な態度で迎え、勝ち気な濃姫も臆さぬ物言いで信長に対抗。最悪な出会いを果たした2人は、互いを出し抜いて寝首をかこうと一触即発状態にあった。そんなある日、尾張に今川義元の大軍が攻め込んでくる。圧倒的な戦力差に絶望しそうになる信長だったが、濃姫の言葉に励まされ、2人は共に戦術を練って奇跡的な勝利を収める。いつしか強い絆で結ばれるようになった信長と濃姫は、天下統一へと向かって共に歩み出す。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆ラブストーリー 最悪のドタバタ初夜から始まった2人の犬猿の仲は、信長の窮地を濃姫が救う事で通じ合う。桶狭間の勝利は、濃姫の英知による暗躍のおかげ。京に入れば、町に降りて相好を崩した2人はいよいよ一つに。比叡山の焼き討ちをはじめ、戦で“我、人に非ず”と次第に魔王と化していく信長に心が離れ、ついに離縁を申し入れた濃姫。復縁するも、病理に伏した濃姫と信長に待つ運命の末路。信長を描く作品は数あれど、ここまで濃姫との関係に焦点を絞った、振り切った作品はない。本作を通して敵将が登場しない演出は、つまり濃姫の目線で描かれていたわけで、ともすれば小難しくなりがちな時代劇が、2人のラブストーリーとして非常に見やすく作られていた。 ◆涙 明智の饗応の失態に、暴行し解任を命じた信長の目に潤む涙。魔王と呼ばれてもなお、配下への想いが垣間見える優しい涙の演技が何気に素晴らしい。濃姫が一度だけ涙したのは、“必ず戻る”と告げて発つ信長に、おそらく自分の死期を読み最後の別れとなるのを悟った時。一滴の涙で深い想いを伝えるあの演技も相当なもの。火の渦で信長が最後を悟り流した涙は、叶わない天下布武への思いではなく、果たせない濃姫との約束のため。本作ならではの解釈とこの演出も素晴らしかったし、それを至って自然にこなした2人の演技が大手の拍手ものだった。 ◆蝶 長篠の戦場でそっと信長の肩に止まる一羽の蝶。帰蝶という呼び名があったとされる濃姫の化身が、魔王と化した信長にそっと寄り添う重要な演出だった。そして本能寺で信長が蛙の香炉から抱いた幻想。脱出し濃姫と船で南蛮へ向かう、夢とも現実とも一時分からなくなったあの描写は、荘子の“胡蝶の夢”(現実と夢とが区別できないことのたとえ)と解釈する事もできる。濃姫には胡蝶という呼び名もあったとされる事を考えると、練りに練った脚本の妙もここにあり。約3時間の大作の中で、製作陣がおそらく他にも散りばめただろう色んな演出をまた発見してみたくなる、素晴らしい作品でした。 ◆評価(2023年1月27日時点) Filmarks:★×3.8 Yahoo!映画:★×3.2 映画.com:★×3.7 ◆関連作品 「るろうに剣心」シリーズ(’12~’21) 大友啓史監督作品。全5作ともNetflix配信中。 引用元 https://eiga.com/amp/movie/97397/ https://ja.m.wikipedia.org/wiki/THE_LEGEND_%26_BUTTERFLY