
Till

ヒメアノ~ ル
平均 3.4
古谷実の同名漫画を吉田恵輔が映画化したサスペンス。 純粋に笑って楽しめる「ラブコメ」、緊迫感・恐怖感溢れる「スリラー」、物語がどこに着地するか分からない「サスペンス」、そして心揺さぶられる切ない「人間ドラマ」といったあらゆるジャンルを取り込みつつも、それらが一切バランスを崩すことなく構成されているのが見事。原作からはかなり改変・脚色が施されているそうで、もはや別物に仕上がっているとの意見もあるらしいが、原作を知らない自分はその辺の是非を気にすることなくフラットな視点で観ることができたし、そもそも原作どうこうの前に一つの映画として非常に完成度が高いと思う。 前半は、清掃会社のパートタイマーとして働く岡田進(濱田岳)が同僚の安藤勇次(ムロツヨシ)からカフェ店員の阿部ユカ(佐津川愛美)との恋の橋渡し役を頼まれたのにもかかわらず、安藤に隠れてユカと付き合うことになってしまい…というストーリーで始まり、合間合間にサイコキラー森田(森田剛)の存在をチラつかせてはいるものの、基本的にはラブコメがメインである。ただ、ここもムロツヨシの絶妙な変人感に濱田岳の繊細な演技も相まってラブコメとして普通に笑えて楽しめる(個人的にはユカの友人アイちゃんがツボ)。ところが中盤に差し掛かろうとする頃にようやく「HIMEANOLE」というタイトルが出たかと思えば、そこからサイコスリラーへとジャンルが移行していく。殺人描写もかなりリアルで、本作は年齢制限(R15+)を受けているのだが、おそらく「グロさ」というよりは「生々しさ」がその最たる所以なのではないか。森田剛のジャニーズとは思えない怪演も手伝ってここはもう「ホラー」とも言える恐ろしさ。 しかし、ラスト5分くらいの展開で本作のもつ「ドラマ性」が爆発し、一気に観客の涙腺を緩ませる。この辺りが他の単なるサイコパス映画とは一線を画する部分なのだが、本作のレビューを読んでいると「森田に同情できない」「どんな事情があれど殺人を犯してはならない」として“批判”している文章が散見される。もちろん言ってることは正しいのだが、それを理由に批判するのは筋違いではないだろうか。というのも、本作はサイコキラーとしての森田に対して同情させるような作りには全くなっておらず、むしろ嫌悪感・憎悪感を抱かせるような演出が為されている。そこに最後森田の“あの頃”の映像を挿入することで、彼が変わり果ててしまった事の【悲哀】、そして彼を変えてしまった事の【重み】が後を引くのである。現状の森田に何一つ同情できない・理解できない、“だからこそ”理解できていた頃が想起されて【哀しさ】【やるせなさ】がこみ上げてくる。なので、「同情できない」というのはある意味大正解の反応であり、制作陣が意図していたものだと個人的に思う。 99分と短めの尺でありながら、非常に濃密かつエンターテインメントとして抜群に面白い。しばらく余韻の残る作品で、最初は★4にしていたのだが、このいつまでも消えない余韻につい★4.5に変えちゃいました。