レビュー
矢萩久登

矢萩久登

5 days ago

5.0


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プロジェクト・ヘイル・メアリー

映画 ・ 2026

平均 4.0

2026年03月21日に見ました。

2020年代SF映画の新たな到達点。 予備知識ゼロで挑んだ、驚愕の宇宙体験。 ※※ネタバレを含みます※※ 近年の洋画不振が叫ばれる状況下にあって、連日満席の熱気を帯びているのがこのSF超大作です。私はアンディ・ウィアーによる原作は未読のまま、本編の予告編とチラシの情報のみという、ほぼ予備知識ゼロの状態で劇場へ足を運びました。 鑑賞前は、地球の危機を救う『アルマゲドン』的な王道ストーリーや、『E.T.』のような異星生物との心温まる交流を描く作品を想像していましたが、本作は決してそんな単純な作品ではありませんでした。 本作は、『2001年宇宙の旅』(1968)から始まり、『未知との遭遇』(1977)、『コンタクト』(1997)、『インターステラー』(2014)、そして『メッセージ』(2016)といった、SF映画の金字塔たちが築き上げてきた荘厳なる系譜を、真正面からしっかりと受け継いでいます。 特筆すべきは、実に巧みな物語の構成です。時間は直線的には進みません。 主人公が、太陽系から12光年離れたタウ星へと向かう宇宙船内で目覚めるところから幕を開けます。 現在進行形の極限ミッションと、主人公が宇宙船に搭乗するに至った経緯を描く過去のパート。 この二つが見事な並行描写で進行していく語り口の鮮やかさこそ、本作の最大の白眉(はくび)といえるでしょう。 また、この手のSF映画において、主人公を突き動かす動機としてありがちな「守るべき大切な家族」や「愛する恋人」、「愛くるしいペット」といったステレオタイプな描写が、本作では一切排除されている点も新鮮でした。 この潔さが、ラストにおける主人公のある重大な判断にも深く関わっており、これまでのSF映画にはない新たなキャラクター像と感動を提示しています。 同じアンディ・ウィアー原作の『オデッセイ』(2015)の世界観をさらに深化・発展させた本作。 SF映画の新たな金字塔として、今後長く語り継がれるであろう傑作です。