レビュー
2020年141本目は、人気コメディアンのジョナ・ヒルが初めて監督をつとめた『ミッド・ナインティーズ』。 ------------------------------------------------------------ 正方形サイズの16ミリで撮影されたアングルに当時のカルチャーや音楽がたっぷり詰まっていて、90年代ど真ん中の世代にとってはセンチメンタルな気分に浸れること間違いなしです。年頃の少年が悪ガキどもに憧れてスケボーを始めてみたりタバコ吸ってみたり、ちょっと痛々しいけど輝かしい青春の日々が見事に活写されています。山あり谷ありの展開はありませんけど、じんわりと良さを噛みしめるタイプの作品でしょう。 ------------------------------------------------------------ また彼らの生活は両親含めとても「裕福」と言いきれるものではなく、ファックシットやレイもその過酷な身の上を吐露します。所得格差や貧困に苦しむ少年たちがスケボーを中心に集う構図は、奇遇にも現在公開中のドキュメンタリー『行き止まりの世界に生まれて』に通ずるものです。両作品において親による暴力や虐待に言及する場面がありますが、ジョナ・ヒル監督は本作において「男社会のヤダ味」にも言及しています。 ------------------------------------------------------------ 確かにグループに一度属すると楽しいことだけでなく、同調圧力によって煙草・麻薬・暴力といった悪しき風習を強要する事態になりかねません。こうした歪んだ「マスキュリニティ(男性性)」はアメリカ社会の1つの問題としても知られており、オープニングで主人公が兄イアンに殴られるシーンにははっきりとした嫌悪感を覚えます。単なる青春ドラマに留まらない視点の鋭さに、ジョナ・ヒル監督の卓越した才能を感じさせる1本です。
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