レビュー
とにかく主役である6歳のムーニーを演じきったブルックリン・キンバリー・プリンスちゃんに脱帽させられます。あまりに自然な存在感は最早演技であることを忘れさせ、今すぐあのモーテルへ向かったら本当に彼女がそこにいるのではと錯覚してしまうほどです。 本作には様々な対比が伺えます。裕福な一家が訪れるディズニーワールドの傍ら、モーテルでは住人が貧困と闘いながら毎日を生き抜くことに必死です。モーテルの壁面は紫・緑・オレンジと実に色彩豊かですが、部屋の中で彼らは不健康・不衛生な暮らしを強いられているのです。そんな過酷な現実に対し、「父性」の役割を背負わされたウィレム・デフォー演じる管理人ボビーの思いやり、ヘイリーの惜しみ無い愛情表現が感じられる点が唯一の救いとなっています。 こうした現状を一人の子供の視点から徹底して映し続けるため、作風はなかばドキュメンタリーに近く、起承転結も映画的な興奮もこの映画には存在しません。ところがラスト1分、本作はこれまでと全く違うスピードで走り出します。恐らく結末には賛否両論あるかと思いますが、これはショーン・ベイカー監督の「切なる願い」の顕れなのでしょう。そう思うとますます複雑な胸中に駆られ、何だかうまく受け止めることができないのでした。
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