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ライフ・アクアティック
平均 3.4
2022年01月28日に見ました。
ウェス・アンダーソンが監督・共同脚本を務めた、2004年公開のファンタジー・コメディ。 ウェス・アンダーソンの長編4作目となる本作では、海洋探検家で映画作家の主人公スティーブが仲間たちの新たな冒険に出る様子が描かれます。『天才マックスの世界』と『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』を順に鑑賞してきた訳ですが、続く本作『ライフ・アクアティック』を以てウェス・アンダーソンは確実に何かを掴んだのではないでしょうか。と言うのも、前2作に共通する独創的な味わいの要因の一つには「随所に施された”さり気なくもオーバー気味な誇張・デフォルメ”」が挙げられると思います。『天才マックスの世界』で言えばマックスの水族館建設やラストの本格的過ぎる舞台劇、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』だとロイヤルが孫たちと遊びに出かけるシーンや結婚式会場で起こる事故など、共に現実ベースの物語であるにも関わらず時折作品のスケールにそぐわないシーンが挟み込まれています。しかしそもそも虚構性の高いウェス・アンダーソン作品の中ではこういったシーンも「ギリ不自然ではない/あり得なくはない」という風に割とスムースに伝わってくるんですよね。そして本作はまさにこの絶妙な誇張・デフォルメ感をこそ全面展開したような作品だと思うのです。この振り切りが作品全体のビジョンをより明快にしており、前2作に比べ劇映画として圧倒的に観やすくなりました。以降の作品は本作で見出したメソッドを踏襲しているとも言えますし、彼のフィルモグラフィ上でも実はかなりの重要作ではないかと考えています。 また先程も触れた「作品全体の虚構性」に関しても、本作のそれは過去作と比べても群を抜いてますよね。何しろ今回は「劇中劇」や「空間を真横から捉える断面図的なカット」、名手ヘンリー・セリックによる「ストップモーション・アニメ」といった印象的な演出が豊富に盛り込まれていますし、撮影や美術、ロケーションによる情報量もこれまでとは桁違いです。これらの手法によって醸し出される”露骨な作り物感”は「映画を作る人達の映画」という作品性も強調していますが、同時にこうした突飛な手法やアイデアを活かす為に物語自体はこれまで以上にシンプルになっています。その結果本作ではウェス・アンダーソン印の「デザインセンス」と「ユニークな物語」が互いを引き立て合っており、よりエンタメ性に富んだ間口の広い一作にもなっていると思います。ポップで楽しい冒険コメディでありながらもウェス・アンダーソンの好奇心や創作意欲が爆発した本作、個人的には彼の監督作の中でもかなり好きな一本となりました。エンディングもイカしてる。 あの着こなし感もビル・マーレイの才能だと思う。