レビュー
【人間不信に陥る怒涛の心理作戦】 女スパイがロシア側なのか、アメリカに寝返るのか、はたまたそのどちらでもないのか、極限状態の中での心理作戦の連続に、見ているこちらまで、人間不信に陥るレベル。 ◆ 出演は『パッセンジャー』のジェニファー・ローレンス。「ハンガー・ゲーム」シリーズのフランシス・ローレンス監督との再タッグ作品。33年間CIA局員という経歴を持つジェイソン・マシューズによる同名小説が原作。 ◆ 事故でバレリーナになる道を絶たれたドミニカは、ロシア政府が極秘裏に組織した諜報機関の一員となり、自らの肉体を使った誘惑や心理操作などを駆使して情報を盗み出す女スパイ「スパロー」になるための訓練を受ける。やがて組織の中で頭角を現したドミニカは、ロシアの機密情報を探っていたCIA捜査官ナッシュに近づくというミッションを与えられる。接近したドミニカとナッシュは互いに惹かれあいながらも、それぞれのキャリアや忠誠心、国家の安全をかけてだまし合いを繰り広げていく。 ◆ ドミニカ(ジェニファー・ローレンス)がスパイとしてロシア側なのか?アメリカ側につくのか?そのどちらでもないのか?最後の最後まで彼女の真意が分からない圧倒的な心理作戦が続く。中盤からは、見ているこちらですら、何が真実で誰が真理なのか分からない、誰も信じられない不思議な感覚に陥れられる。終わってみれば、思ってもみなかった伏線が一気に回収され、完璧すぎるエンドに。原作力が圧倒的である事に気づかされる。 この映画を見る前に絶対に知っておきたいのが、原作者が元CIA局員で33年間もその職務についていたという事。どこまでが本当かはわからないけど、武器の使い方や拷問の方法、スパイの常に死と隣り合わせな緊張状態が、究極なリアリティとして終始飛び込んでくる。いわば『キングスマン』シリーズのバラエティに富んだ道具アクションに通じる、こちらはシリアス&リアル版。この映画の二大要素となる、“心理作戦”と“死と隣り合わせの緊張感”、原作者の事を知っているのといないのとで感じ方が大きく変わってくると思う。 第三者的見方をすると、アメリカ=善、ロシア=悪の図式がアメリカ映画ならでは。まさに今世間ではアメリカや欧州がロシアの大使を追放するニュースが飛び交う中、ロシアスパイをリアルに描くこの映画の“超リアルタイムな風刺”がシビれる。スパイの訓練学校の中での非人道的な教育や、映画を通して描かれる裏切りに対しての徹底的な報復の様子が、アメリカ人が持つロシアへの拭いきれないイメージを少なからず暗示していたと思う。 ジェニファー・ローレンスファンとしては、もう彼女のこれ以上ない体当たり演技は拍手しかない。アカデミー女優ながら、何回脱ぐんだという脱ぎっぷり、バレエシーンの美しさしかり、“Are you going to fxxk me or not”のセリフにシビれました。ある意味同じ女スパイ映画『アトミック・ブロンド』のシャーリーズ・セロンに見る、アクション軸な体の張り方とは違い、シリアスでより緊張感のある体の張り方、そんな風に感じました。 最後に超蛇足ですが…なんだかジェニファー・ローレンスが新川優愛に見えてしょうがなかった笑
いいね 19コメント 0


    • 出典
    • サービス利用規約
    • プライバシーポリシー
    • 会社案内
    • © 2024 by WATCHA, Inc. All rights reserved.