
dreamer

ゴールデンボーイ
平均 3.0
この映画「ゴールデン・ボーイ」は、スティーヴン・キングの原作を「ユージュアル・サスペクツ」の才人ブライアン・シンガーが映画化した、心理サスペンスの異色作だ。 善良なひとりの少年が、自分自身の中に眠る"悪の心"に支配されていく様を、じっくりと描き出していく。 ロサンゼルス郊外に住む高校生のトッド(ブラッド・レンフロ)は、成績優秀、スポーツ万能の優等生だった。 そんな彼がホロコーストについて勉強を進めるうちに、アーサー(イアン・マッケラン)という、ひとり暮らしの孤独な老人が、アウシュビッツの副所長で、"吸血鬼"と呼ばれた戦争犯罪人クルトであることを知ってしまう。 トッドは、それをネタにクルトを手玉に取り、収容所の実態を聞き出す。 それは単に探求心から生まれた行為であったが、クルトが語る残虐な話によって、彼はしだいに、"悪の魅力"に取り憑かれていくのだった------。 この原作の小説は、映画化するのが非常に難しかったのではないかと思う。 ナチスの重要戦犯である老人とスポーツ万能で成績も優秀な若者の交流、そして、心の奥底に潜む残虐性の目覚め。 キャラクターを描き出すだけでも至難の業なのに、その心の変遷までも浮き彫りにしなければならないのだ。 結論から言えば、やはり満足のいく出来栄えではなかったように思う。 まず、序盤での老人が若者にナチスの殺戮の話を聞かせる部分だが、ここはあまりにもあっさりとし過ぎた感がある。 もっと、ねっとりと汗がにじむほどに重い時間として引っ張っても良かったのではないかと思う。 そして、ナチスの戦犯であるイアン・マッケランが"狂気"を演じるには、やや弱い。 ナチスの制服に身を包んだイアン・マッケランが、ブラッド・レンフロの命令で家の中を行進する場面は、強烈な見せ場になっていたが、しかし、全体的には、ブライアン・シンガー監督による"狂気の演出"も今一つの感があった。 例えば、スタンリー・キューブリック監督などに較べると、まだまだ遠く及ばないと思う。 しかし、この二人のピンと張りつめた糸でも引き合うような、微妙な心の駆け引きは、なかなか巧みに描かれていて、見応えがあったと思う。 互いの弱い部分を抉り出しては、互いに優位に立とうとするあたりの描写はなかなかスリリングでハラハラさせる面白さに満ちていたと思う。 そもそも、考えてみれば、人間の本質的な"邪悪"とは、人間の弱さを象徴するものなのかもしれない。 それにしても、清く明るい郊外の町に、過去最悪の邪悪な行為を持ち込んだ舞台設定は見事というしかない。 ともかく、スティーヴン・キングの原作に大胆なアレンジを施し、単なる悪夢や殺人の物語になってしまうことのないように細心の注意を払ったと思われるブライアン・シンガー監督の熱意は買いたいと思う。 そして、何より、この難しい原作に真正面から取り組んだその姿勢こそが、賞讃に値すると思う。