
アリちゃんパパ

ミッドナイトスワン
平均 3.9
トランスジェンダーの踊子凪沙と彼の従姉妹の娘一果の至上の愛を描いた名作です。 本作で内田英治監督は一切の妥協を排して、凪沙をとことん追い詰めます。本当に辛く厳しい描写の連続です。だからこそ凪沙と一果が公園で踊るシーンやクライマックスの浜辺のシーンが至上の宝石のような輝きを放っているのです。 本作は、映像の美しさも格別です。上記の浜辺のシーンやバレエシーン、東京の夜景やバスの空撮のシーンだけでなく、新宿の猥雑な日常を映したシーンにも美しさが感じられました。言うまでもなく映画は、映像芸術であり、優れた映画といえるためには映画が美しくなければなりません。この点でも本作は一級品です。 次に音楽。本作はほぼピアノだけのシンプルな構成ですが、都会の片隅で生きる2人を表現するのに、これ以上は考えられない程に心に滲みる見事な音楽です。 本作は日本映画史上最高のバレエ映画でもあります。一果役の服部樹咲は、体幹がしっかりしていて体が柔らかい上、手足が長く理想的なバレエの体型をしているため、彼女のバレエは、この上なく美しく見事としか言いようがありません。最盛期の草刈民代を彷彿とさせてくれます。 草彅剛は、これまでアイドル出身であるがゆえにキネ旬に代表される日本映画の象牙の塔からは、全く評価されてきませんでした。確かに舞台やテレビドラマに比べると映画の作品に恵まれていなかったのは事実です。しかし表情だけで役を表現できる彼の演技力の凄さは舞台やドラマに携わっているプロには定評があります。そんな彼の実力がようやく映画界で正当に評価される作品が現れたのは喜ばしい限りです。 水川あさみ、真飛聖、田口トモロヲをはじめとする全てのキャストも最高の仕事をしています。 芸術としての映画が表現すべき最高のテーマは、愛だと確信しています。そして本作は、近来稀に見る愛の映画です。凪沙と一果の深まりゆく愛の情景に心が痺れ、後半はずっと涙を堪えることができませんでした。 ☆2021.3.19 草彅剛は、惜しくもキネ旬の主演男優賞は逃しはしたものの、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞に輝きました。長年のファンとしては、感無量です(涙)。