
ジュネ

ある人質 生還までの398日
平均 3.6
直近で劇場公開された新作をレビュー、今回取り上げるのは『ある人質』。実際に1年以上もの間、人質に取られたダニエル・ブリュー氏の実体験に基づきます。 ------------------------------------------------------------ この手の事件が起こると必ず批判されるのは現地に向かった側で、「自業自得」責任論に発展します。ダニエル氏も確かに向こう見ずなところはあったのですが、それがテロリズムを正当化する理由にはなりません。劇中で語られるようにISは手段を選ばず、ジャーナリストからダニエル氏のような写真家まで金目的で片っ端から外国人を拉致し、やり口は卑劣極まりないの一言。 ------------------------------------------------------------ しかもデンマーク政府はテロリストに対して身代金の支払いをしない方針を打ち出しており、彼にとって頼れるのは「家族」のみ。家族とテロリストの息詰まる駆け引きが、静かなトーンで精緻に描かれていきます。「静か」と言えば本作は不思議なことに、ダニエル氏がテロリストのアジトに隔離されてからの生活を淡々と綴っていくんですね。起床、ストレッチ、食事、読書…。 ------------------------------------------------------------ 拷問のシーンも直接的に見せることはほぼなく、タッチが「大人しすぎる」くらいです。思うにこのレベルまで行ってしまうと、テロに対する「憎しみ」や「怒り」は最早2の次なのでしょう。今日1日を生き延びることに精一杯で、雑念が消え失せたかのようです。それが逆に現実味を増しており、物足りないと感じる人もいるかもしれませんが、個人的にはなかなか新鮮でした。