レビュー
2020年135本目は、ジャーナリストが決死の覚悟でソ連に潜入し衝撃の事実を暴き出す『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』。 ------------------------------------------------------------ 長編映画としてはアカデミー賞にノミネートされた『ソハの地下水道』から実に8年ぶりとなります、アグニェシュカ・ホランドの新作です。正直なところ、前作に比べると尺もコンパクトな上、張り詰めるような緊迫感はかなり薄まっています。主人公がソ連で出会った美女と恋に落ちるラブロマンス要素が含まれているなど、作りが分かりやすく「ベタ」になっているのは否めません。 ------------------------------------------------------------ ただしウクライナに潜入以後の風景は壮絶の一言で、この部分に関しては見応えがありました。木の皮をかじり、遂には禁断の領域に踏み込まなければ生きていけない環境は地獄そのもの。一方、暖かい部屋の中で豪勢な酒と飯を楽しむ富裕層・政治家の姿が対比的に映し出され、見る者に不快感を与えます。この時、監督が彼らの咀嚼音や物をゴクリと飲み込む音を意図的に入れてるんですけど、こんな最低のASMRは聞いたことがないです。 ------------------------------------------------------------ 真実を明らかにすることを求め続けたガレス・ジョーンズ氏の姿勢に畏敬の念が募りますが、残念なことにロシア政府は今もウクライナ飢饉「ホロドモール」を自らの責任と考えていません。1200万人の死者を出しておきながら、ロシアにも同様の悲劇はあったと主張しているんですから呆れて物も言えません。未だに続く「赤い闇」の名残を感じます。
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