レビュー
実際に起こった大牟田4人殺害事件(暴力団組長一家が知人の金融業者一家3人とその知人1人を殺し、家族4人全員死刑囚となった)のノンフィクションに基づいた作品。 作品なのか監督なのかに露悪的というか、人を食った(というかバカにした)ようなイメージがあったけれど、ひくところはひいてて意外と品良く、観やすかったです。ただ、「まさか」と思う所も全部本当にあった事なので、嫌な気持ちにはなりました。 よかったところ ・一番怖いのはキレるポイントが分からない人。 「グッド・フェローズ」のジョー・ペッシのように、それまでずっとご機嫌だったのに、変なきっかけでブチギレる。分からない物、得体の知れない物が一番怖い。 ・すごく凶悪な事してるのに何だか間抜け。 実際の舞台である九州でなく、静岡が舞台。「〜ら。」、「〜ね。」という静岡弁の響きが可愛らしく、深刻に見えない。 絞め殺してる最中にジュース飲ませてもらったり、殺人のアドバイスをもらって「物知り博士じゃんね」とか、真剣に殺してない感じが怖い。 ・死に向き合った人間の様子 首を絞められ意識を失ったり、頭を銃で撃たれてもなかなか死なない。友人が頭を撃たれたのを見てるのに、頭出せと言われて素直に出しちゃう妙さ。どれも、そんなバカなと思うのに、実際の話だからびっくり。 ・主役の間宮祥太朗が最高。 家族に言われるがままに殺人を重ねる次男タカノリ役。彼女や小人症の友人に優しかったり、知らないおじいちゃんにジュース奢ったり、いい人なのかなと思ってしまう位感情移入してしまう魅力。でもやっぱりめちゃくちゃ怖い説得力。顔はもちろん佇まいが格好良く、惹かれました。 ・全役がそれぞれ際立っている。 兄役の毎熊克哉の凶暴でズルい男が良かったです。おだてたり演技したり意外としたたか。元々、ちょっと悪そう感が好きな俳優だったのですが、極悪な風体に最初はびっくりしたけど、もうそういう人にしか見えなくなりました。「麦茶切らすなや」が好き。 六平直政の「怖そうだけど本当はいい人」みたいなのしか見た事なかったので、「本気の六平直政」にビビる。 話が通じない感が異常で怖い母(入江加奈子)。息子相手に胸を強調して「イヤイヤ」する不気味さ。 タカノリの彼女・カオリ(清水葉月)の演技の自然さ。凶悪兄弟にちっとも怯まない強さ。賢そうな感じ。 藤原季節の不憫っぷり。 ・細かな演出 車に乗る時ちょっとクラクション鳴っちゃう。 兄弟が住む家がきちんと整頓され、手の込んだ料理を食べたり、麦茶を常備したり、丁寧に暮らしている。 血がいっぱい付いたタカノリの服、後日のシーンではきれいになっているのも、ミスではなく、誰かが丁寧に洗った設定なのだと思う。
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