レビュー
コウキマン

コウキマン

3 years ago

2.0


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峠 最後のサムライ

映画 ・ 2020

平均 2.8

2022.10.30.117 ネタバレあり 舞台は幕末の長岡藩、主役は家老の河井継之助。まず原作の司馬遼太郎“峠”について書かせてもらいます。河井継之助は、激動の幕末において、長岡藩の身の振り方を案じて江戸に行く。江戸では良い師を探しながら陽明学へと傾倒していく。その後、日本中を歩きながら高名な者と会い見聞を広げていく。 そういった中、継之助はやがては自分が家老職となり藩の舵を取らねばならなくなると予見し、そのときのために藩の宝物を売り捌いたり、金銀の為替に着目し銀を売り、とにかく金を貯めた。その金で軍備を拡大し、軍を洋式化した。加えてこのとき世界に7機しかないガトリング砲まで調達した。 継之助は、新政府軍(薩長土肥)と幕府軍に二分される世にあって、スイスのような中立国を作ろうとしていた。そのためには軍事力がいる。 極力、戦は避けようとするが、新政府軍からは敵認定され、幕府側についた東北諸藩からは裏切り者として扱われる。やがて戦が始まり、長岡藩は激烈な抗戦をするものの敗北。継之助は脛に銃弾を受け、後に死亡。死の際、部下に自分の亡骸を焼くために火を起こさせたとか。 長岡藩は、新政府軍に降れば東北諸藩討伐の先鋒とされていたし、幕府についても同じこととなっていた難しい局面だった。とは言え継之助がいなければまた別の道があっただろう。 小藩が継之助のような巨人を生んだことによる悲劇。継之助のような日本の舵取りができたほどの巨人が小藩に生まれ落ちたことによる悲劇を描いている。また継之助は、坂本龍馬のように“日本”視点で考えることをせず、あくまでも“長岡藩の河井継之助”の立場を貫いた。それが彼の信念だった。 というような話なのですが、上中下巻あわせて1300ページほどある内容を2時間でまとめられるはずもなく(僕が思うに2時間で描けるのは200ページ前後)。この映画では家老になったあとの戦前夜くらいから描かれています。そのため河井継之助の人物の魅力と、長岡藩の悲劇を表現しきれていない。そのため低評価としました。 【余談】 これまた司馬遼太郎小説の話となりますが、もともと短編“英雄児”を長編で書き直したのが“峠”。“英雄児”のラストでは、藩を戦禍に巻き込ませた継之助を恨む元長岡藩の民が、たびたび継之助の墓を蹴り倒しにくることが書かれていた(墓守の証言だそうな。切ない)。 さらに余談ですが、河井継之助が傾倒した“陽明学”は、その徒に劇的な最期を遂げさせる傾向のある危険な学問。山田方谷なんかはその危険性を知った上で活動していたとか。 陽明学の徒で有名なのは、西郷隆盛、吉田松陰、高杉晋作、大塩平八郎、三島由紀夫など。


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