レビュー
cocoa

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5 months ago

4.0


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型破りな教室

映画 ・ 2023

平均 4.0

原題は「RADICAL」。 「(従来の枠を超えた)改革や行動」の意味です。 舞台はアメリカとの国境近くのメキシコ、マタモロスの街。 麻薬や殺人など犯罪が蔓延る地域。 メキシコ国内で最低学力校と言われるホセ・ウルビナ・ロペス小学校は新学期を迎える。 そこに赴任してきた教師フアレスは元来のカリキュラムとは違った型破りな授業を繰り広げる… そんな2011年のメキシコで実際にあったストーリーです。 メキシコ映画を観る時は覚悟をする悲惨な犯罪現場など。 今作も子ども達が登校する道に転がる他殺体のシーンは恐ろしいがこれも日常なのだろう。 フアレスが赴任してきた小学校はもうすぐ「ENLACE」と呼ばれる全国学力テストがある。 6年生のうち半分も卒業できないと言われるこの学校は政治的に腐敗しきった環境も大きな要因だった。 ゴミ集めの仕事で暮らす父を持つ天才少女パロマ。 貧しい暮らしの中、宇宙や天文学に興味を持っている。 そんなパロマを好きな男の子ニコ。 兄はすでにギャング集団に入り、ニコにも麻薬の受け渡しを担わさせている。 いつも幼い弟と妹を世話するルペ。 新しい先生により哲学や倫理に興味を持ち始めるルペ。 家事一切を引き受けているルペがバスに乗り中央図書館に行って哲学書を借りるシーンはとても良かった。 でもまた母親の妊娠検査薬を見て小さなショックを受けた表情がたまらなかった。 この3人を軸にあくまでも主人公はフアレス先生だが、校長との関係も良い変化がありとても良かった。 子ども達に考えさせ、夢を持たせ、答えを導き出すまで寄り添う姿。 校庭の水槽のようなところで水に校長を潜らせ体積を図るシーンなんて最高だった。 これもルペが弟妹をお風呂に入れていた時にひらめいた解き方だった。 もちろん想定外の出来事もあった。 学校に通い続けたいと願ったニコの悲しい結末… パロマを守った結果にしては悲しすぎる。 それにショックを受けたフアレス先生も校長の助言でやっと立ち直る。 テストの結果、国内で一位になった優秀なパロマは奨学金も得る。 その事を報じたニュースでパロマの親子は家を得た事も朗報。 それはそれで嬉しいが、私はメキシコのどこにでもいそうなニコとルペのような境遇が印象深い。 特にルペは生まれてきた赤ちゃんの世話をするために学校には行けなくなる。 いつか学校に戻って好きな哲学を学んでほしい。 ラストにも出るが学校にさえ通えない子ども達もたくさんいるはず。 裸足でストリートチルドレンのように暮らしていたり、生きていくことだけで精一杯の子ども達。 学べる環境の大切さ、夢を持つことができるのは当たり前ではないと改めて思った。 それからジャケ写真がとても良い。 後ろ向きのフアレス先生の前に座る子ども達の表情が素晴らしかった。 みんな目を輝かせて様々な問題に興味を寄せているのがわかる。 「学びたい」と思える環境の大切さを感じる良い作品でした。