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セプテンバー5
平均 3.5
原題も「September 5」。 1972年9月5日、ミュンヘンオリンピック開催中。 イスラエルの選手村で起きたパレスチナの過激派組織「黒い9月」によるテロ事件。 現地で放送するアメリカABC放送の衛星生中継における一部始終の混乱を描いたドキュメンタリータッチの内容です。 この事件はスピルバーグの『ミュンヘン』で観ているので事件の内容も知っています。 今回はABC放送のスポーツ担当局によるもので…(報道部ではない)、殆どが調整室での緊迫したやり取りだったのが異色でした。 スポーツ局の代表ルーン・アーレッジ(ピーター・サースガード)。 調整室の運営責任者マーヴィン・ベイダー(ベン・チャップリン)。 放送を任されたディレクター、ジェフリー・メイソン(ジョン・マガロ)。 そしてドイツ人の通訳マリアンヌ(レオニー・ベネシュ)などを中心に他のスタッフの働きぶりも際立っていた。 終戦から27年が過ぎた地で、追悼と和解のためのオリンピックと言われる中、大会で7個の金メダルを獲ったスピッツの放送に対して「ドイツで金を獲った感想を聞け」と指示するルーン。 スピッツはユダヤ人だから様々な反応があったはず。 突然、銃声を聞いたと騒ぎ出す中、イスラエルの宿舎でテロ事件が起きる。 選手村が閉鎖されてしまい、スタッフの一人ギャリーを選手に見立てて侵入させる手際の良さ。 さらにルーンはABCの放送枠が切れそうなのでCBSと強気に交渉する。 目の前でテロ事件が起き、世界初の衛星生中継とあって、情報が交錯する中、調整室は慌てながら進行を考える。 冷静に事態を掴むマーヴィンと何がなんでも情報を電波にのせたいジェフの対比。 「競争じゃない」 「確認を待て」と言うマーヴィンの電話を一方的に切るジェフだった。 ドイツ語通訳マリアンヌの仕事振りも素晴らしかった。 ラジオや電話を同時に聞き分け、彼女がいなかったらどうなっていたか。 そんなマリアンヌも事件の顛末を知り 「罪のない人がまたドイツで死んだ」 「私たちドイツはまたしくじった」と嘆く姿が印象に残った。 史上初の衛星生中継をテロリスト達も観ていたと言う事実。 そして「人質解放」と誤報してしまう失態。 この二つのミスが全員死亡の原因と言われるが、あの当時の報道の現場で批判できるだろうか。 史上初めてテロ行為が世界中に生中継され、9億人がそれを見ていた。 ジャーナリズムの形を大きく変えたと言われる一連の報道。 事件が一番ひどい結果に終わり、調整室を出て車に乗ったジェフの無力感が何とも言えなかった。 このテロ事件の後もずっと衝突が続くイスラエルとパレスチナの関係に人々は何ができるのだろう。 この無力感はずっと続くのだろうか。 ルーン役のピーター・サースガード。 マーヴィン役のベン・チャップリン。 ジェフ役のジョン・マガロ。 マリアンヌ役のレオニー・ベネシュ。 すべてが存在感があって良かった。 製作陣にショーン・ペンの名も発見でした。