レビュー
セルビア戦争を主題として、その過酷な運命に翻弄された夫婦の歴史を紡いだドラマで、かつてアカデミー外国語映画賞にノミネートされた某作品に非常によく似た作りをしているものの、戦争の悲惨や理不尽さ、それでも現実を受け止めて生きていこうとする人間の意思に深い感銘を受ける傑作でした。 ペネロペ・クルスが夫との劇的な出会いに心踊らせる若かりし頃から、不妊に苦しみ女性としてのプライドを失って身も心もやつしていく様も含め、今は老いた主人公の幾重にも刻まれた年輪を一人で完璧に体現しており、本当に凄い女優さんだと感心させられます。 夫のディエゴは最初は何の考えもなく楽観的にしか見えないのですが、実は誰よりも妻を一人の女性として愛し続け、誰よりも繊細な感性を持っていたことが次第に明らかとなってきます。このミステリアスなキャラクターをエミール・ハーシュが見事なギャップを醸し出して演じきっており、彼もまた本作で演技派としての階段を一段登ったことは間違いないでしょう。 わずか2時間弱のフィルム一本に一人の人間の人生を垣間見る、とても貴重な体験のできる一作です。
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